脳内妹と異世界の無人島でスローライフ

架空の世界を旅する物語

第1話、謎の音、雲の中の怪しい光

 深夜に外から謎の音が聞こえてきて目を覚ました。


 ババババババババババ……


 ババババババババババ……


 ババババババババババ……


 音はフェードイン、フェードアウトを繰り返し、断続的に鳴り響いていた。一回の音の長さは2~3秒ほどで、音の間隔はランダムだった。

 一つの音が終わってまたすぐに次の音が鳴り出したり。音がしなくなって静かになったと思ったら、また突然音が鳴り出す。


 非常に奇妙で不快な音だったが、どこから聞こえてくる何の音なのか気になった。


 外に出れば音が聞こえてくる方向が分かると思ったが、音は空全体から聞こえてくるような感じがした。俺が住むアパートがある場所は、周囲が山に囲まれているので反響しているのだろうか。


 低い山の谷間にある、学生が住まう4棟のアパート群、この田舎町に大学が建てられたときに同時に建てられたものだそうだ。深夜3時、街灯はすべて消えており真っ暗だ。俺以外にこの音で起きた学生はいないのか。外には誰もいない。


 ここにいても音がする方向がわからない。谷間から抜けるために道を歩き出した。


 深夜に真っ暗な道を歩くのは正直怖かった。そのうえこの正体不明の不気味な音がさらなる恐怖心を掻き立てたが、音の正体を確かめたいという好奇心のほうが勝っていた。


 音が止まってまた突然鳴り出すたびにびくびくした。


 坂を上り、坂の頂上に出ると、下に田舎町の灯りが見えた。


 まだ音は空全体から聞こえてくる。

 空を見上げると曇りのようで、星は見えない。しかし曇り空の中で一か所、ぼんやりと白く明るい部分があった。

 月だろうか。だが普段見る月の灯りの色と比べるとあきらかに不気味な白さだ。


 坂を下って田舎町に出る。音の方向がわからないので、なんとなくその謎の光の方向に行こうと思った。


 町の中に入っても人の気配はなかった。誰もこの音を気にしていないのか。これほど大きな音に。誰か外に人がいたら何の音なのか聞きたかったのだが無理そうだ。

 この状況を説明してほしい。明かりがついている家の人に聞いてみようと思ったが、深夜に人家のチャイムを鳴らすのは非常識すぎるだろう。


 俺はさらに、先ほど見た雲の中の謎の光の方角に向かって歩き続けた。やはり月ではないかもしれない。徐々に光に近づいている気がする。意識がそちらのほうに引き寄せられて吸い込まれていくような感覚があった。


 光に近づくにつれ、俺の体は次第に軽くなっていき、歩くスピードがどんどん速くなっていくのがわかった。いや、俺はすでに歩いているのではない、体が軽すぎて浮いているのだ。


 宙に浮かび上がると、さらにすごい勢いで空にある光に吸い込まれていく。スピードが速すぎて周囲の空間がゆがんで見えるようだ。どんどん光に近づいていく。俺はもはや自分の意志で動いていない。

 どう考えてもおかしな状況だが逃げる間もなく、危機感を感じる余裕すらなく、俺は空の光に吸い込まれた。



 ***



 光に吸い込まれると、深い霧の中のような、あたり一面が真っ白な空間に出た。この場所では、先ほどまで鳴り響いていた音はなく、無音だった。

 その空間の中で俺の体は重力を感じなくなり、体がふわふわと浮いているのがわかった。まるで夢の世界のようだ。これからどうすればいいのだろう。


 平泳ぎのような動きで霧の中を進んでいくと、その先に3つのトンネルのようなものが見えた。トンネルはその奥が、左から青、緑、黄色に光っている。

 ほかにどうしようもないのでトンネルの中を覗いてみようと思い、青いトンネルに近づいていく。


 トンネルは思ったほど大きくはなく、人が一人入れるくらいだ。


 青いトンネルの目の前まで来て、中を覗こうとすると、突然トンネルの奥に向かって重力が発生し、俺はトンネルに落下した。

 しまった!と思ったが、落ちることにあらがうことはできず、身を任せるしかない。

 落下している間は、周囲は青い空間だけで何も見えなかったが、空の上から急降下しているような感覚があった。


 しばらく落ちているとトンネルの出口らしきものが見えた。出口の先は地面のようだった。俺は地面に直撃すると思って瞬間的に目を閉じた。


 ドサリと音がして固い地面に着地した。不思議なことに痛みはなかった。


 俺が目を開けると、そこは森の中だった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る