第10話 手のひら

 先日、大阪堺市まで兵庫県伊丹いたみ市から伯父さんと伯母さんと年下のいとこが来た。伯父さんと伯母さんは以前、私が乗っていた軽自動車のESSEを譲るために、ご足労を願いました。私は運転にかなりの苦手意識があり、某黒い猫の会社が分割して自宅から徒歩10分の位置に移転してきたため、車には一切乗らなくなりました。そんなとき伯父さんが中古の軽自動車を買おうって思っているって聞かされ、私のあげるよと言いました。ただ私の車は女性が好むデザインで車体は黄色(カリオストロの城のルパンにあこがれた)とおまけに町乗り用と男性受けはしない。それでも伯父さんは凄く丁寧に乗っている車だ、って気に入ってくれて自宅に帰ってからも、私の元愛車をかわいがってくれました。毎日のように洗車をしたり、車のカバーシートを買ってきたり。私はとても嬉しかった。そんな伯父さんですが脳溢血で倒れて車の運転は困難になり、家族の意向で廃車を決断しました。幸い伯父さんは軽い後遺症で済んだのですが。


 倒れてから初めて会う伯父さん。そして伯母さん。さらに15年ぶりくらいに会ういとこ。いとこは完全なおっさんになっていたのですが、伯父さんと伯母さんは背が縮んだなって感想でした。私も元から低い身長ですが去年、背骨や腰骨を5か所骨折して4㎝も縮んだのですが、それでも叔父や叔母の縮み方はまさに老人特有のやつだ。毎日接してないだけに違和感が半端ない。それで別れの際に伯父さんと伯母さんは私に握手を求めてきたけど、その手の大きさは昔と変わらない。子供の頃と同じく、大きくてとても頼りがいのある感じだった、あの手の感覚は忘れていない。手は人を雄弁に語ると言うけど、年をとってもその手のひらの大きさに、伯父さんや伯母さんの偉大さを感じた。


 そういう私は黒い猫の会社で配達前に運行管理者と握手をするって謎な習慣があったのだけど、仕事の休憩中に支店長が「紀伊さんの手は小さくて柔らかくて女の子みたいや」と言ってきた。そしたら事務員が騒ぎ出して。運行管理者の資格を持っている女性が私の手と比べてと言いだした。普段は男性ドライバーとの握手は一切拒否しているのに。比べてみたら私の手の方が小さい。それから私は何だかひなたみたいな受け入れ方を事務員の方々にされて、複雑な気持ちになった。

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