第10話 我慢比べ
「赤猿共……まだ諦めてなかったのかよ」
「キキッ」
鳴き声と共に、赤い目が動き始める。
「根絶やしにしてやる……!」
俺は咄嗟に尻尾を出すと、襲い来る赤猿の首に尻尾を叩きつける。
「キイッ!」
一匹の赤猿が悲鳴を上げ、吹き飛んだ。
暗闇で狙われたのも、きついな。
左から襲い掛かって来るのを感じ、赤猿の攻撃を尻尾で受け止める。
その時、背後から放たれた石が俺の右脇に当たる。
「グウウ!」
骨が折れる音がした。
俺は咄嗟に右脇を押さえて、座り込む。
痛い、痛い、痛い。
けど、痛くても動かないと。
今も目の前の赤猿がこちらに拳を振るっている。
「畜生!」
俺は赤猿の首めがけて尻尾で突きを放つ。
その一撃は赤猿の首をへし折った。
すぐさま、横っ飛びをして他の赤猿から逃れる。
はっきりと数えられないけど、十匹程は居そうだ。
石が飛んできた方向の奥に、遠くからこちらを見ている目が見える。
あいつが長だ。
俺は他の猿を無視して赤猿の長目掛けて走る。
長の目が僅かに動く。
また石を投げるつもりか⁉
俺は近くの木の枝に尻尾を巻き付け、一気に枝に飛び乗る。
それと同時に、さっき居た場所に何かが当たる音がした。
やはり奴は遠くからちくちくと攻めるタイプらしい。
そうはさせるかよ!
木の枝から一気に跳んで距離を詰める。
見えた。奴が長だ。
俺は尻尾で横薙ぎを放つ。
その一撃を赤猿の長は両腕で止める。
鈍い音が奴の両腕から響くが、止められた。
だけど……。
「人は腕もあるんだよ!」
俺は槍で奴の首を狙い、突きを放つ。
だが、これも腕で掴まれる。
こいつ、握力が……強い!
赤猿の長はこちらを見て、勝ち誇ったように笑う。
「キキイッ!」
この瞬間も後ろから赤猿達が走ってきている。
「だけど、尻尾がフリーだぜ」
俺は尻尾を奴の後ろから伸ばすと、首に巻き締め付ける。
「ギイッ……」
長の首がメシメシと音を立てる。
焦った長が必死で俺の腹を叩いてくる。
痛てえ……。
「我慢比べだな、くそざる」
長は尖った石を思い切りさっき骨を折られた右脇に叩き込み、俺は血を吐く。
痛い。けど、ここで絞め殺さないと殺される!
後ろからやって来た他の赤猿の蹴りが俺の背中に叩き込まれる。
骨が軋む音がした。
呼吸が止まる。
だけど……尻尾だけは緩めない。
数秒の我慢比べの後、奴の首の骨が折れる音がした。
「キイイイイイイイ!」
動かない長を見たことで他の赤猿が悲鳴をあげ混乱し始めた。
俺は他の赤猿達を睨みつける。
しばらく顔を見合わせていた赤猿達は、そのまま散り散りになって逃げ去った。
「勝った……舐めるなよ」
乾いた笑いが出た。
「はは……惨めだ。家も焼かれ……帰る場所も失った」
なんとか今回は耐えきったけど、やっぱり無理があるな。
けど、涙を出すのは歯を食いしばって耐えた。
泣かない。悔しくなんてない。いくら燃やされても何度でも家を作ってやる。
だが、体がふらつく。
右脇は血で真っ赤に染まっていた。血を流しすぎた。
ああ……。
俺はそのまま倒れこんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます