1人の世界
ベーコンでべコン
1日目。
カーテンの隙間から覗く日差しで今日は目を覚ました。ベッドから起きて窓を開ける。壁にかけてあるカレンダーは12月を示しているが、木々は色づき、秋風が頬をくすぐる。深呼吸して少し冷たい、心地の良い外の空気を肺に入れて、しっかりと目を覚ます。換気をする気はないから窓は閉めよう。部屋のドアを開けて階段を下りる。
「おはよう。」
少し前まではリビングのソファーでコーヒーを片手にくつろいでいた君が「おはよう。」と返してくれたが今は静かだ。
いつものようにコーヒーをマグカップに注ぐ。ソファーには君が零したコーヒーのシミがまだ残ってる。だからソファーでくつろいでコーヒーを飲むとシミを増やしてしまいそうだから、いつも立ったままコーヒーを飲む。誰かが見たら「コーヒーを飲む時位は座ったらどうだ?」と言うだろうな…
コーヒーを飲み干し、ふぅ…と一息つく。一応ここで飲む最後のコーヒーだったから少し名残惜しい。
階段を上り部屋のドアを開ける。新鮮味も変わり映えもない、君がくれた部屋。クローゼットを開け、大きめのリュックサックを手に取る。口を開け、思いつく限りの必要なものを入れていく。そうだ、包帯とかも入れておくか。
リュックサックの口は何とか閉じたが、少し入れすぎなくらいパンパンになってしまったがまぁいいや。部屋を出た。階段を下りて玄関に向かう。履き慣れた靴を履く。玄関のドアを開けて外に出た。
「行ってきます。」
返ってくる言葉はもちろん無い。
「行ってらっしゃい。」
ぼそっと自分の口からそう出た。
足取りは軽い、君と住んでいた家から離れていくが、余り寂しさはない。心地よい風と一緒にどんどんと進んでいく。君とあの家に住んでから久しく外に出ていなかったから忘れかけていたけど周りにも家があったんだ。塀には白い猫が香箱座りをしている。大きく欠伸をしてから伸びをし、何処かに行ってしまった。気ままだなぁ。
ナーオ
猫の鳴き声がした足元に視線を向けたらさっきの猫がすり寄っていた。目が合った。猫はすぐさま毛を逆立て足から離れて威嚇した。少し悲しい。仕方ないが気持ちを切り替えまた歩き出した。
どれくらい歩いたのだろう、太陽は高い位置にある。家はまばらになって、大きい道路と高い建物のある所に出た。右手側に3階建てかな?横に長い建物がある。門?は開いていたので中に入ってみた。その建物の前には大きな庭がある。でも家の庭と違って緑色では無く土色だった。いつかに君が話してくれた学校ってところなのかな?確かたくさんの子供がここに来てセンセイという人から話を聞く場所らしい。もしかしたら君を知っている人が1人くらいはいるかもしれないし。
おっきなガラスの扉が開いていたところから建物の中に入った。廊下を歩く。散乱してる細かなガラス片を靴底で砕く感触を感じる。君はもしかして嘘をついたのか?どの部屋にもセンセイは居なかったし、そのセンセイの話を聞いてる子供も居なかった。これじゃ君について聞けないじゃないか。
ナーゴ
声の方を向くと灰色の猫がいた。こっちに気がつくとどこかに行ってしまった。お腹が減ったから近くの部屋に入って、沢山ある椅子のひとつに座った。
リュックサックを椅子の前の台において中からご飯を取り出す。
「いただきます。」
1人で食べるご飯はやっぱり寂しいな…こればっかりは慣れそうにない。
少しの間、この広い部屋に小さい咀嚼音が響く。
ふと視線を動かすと壁に時計がかけてあった。時計の針は1時を指す。
ご飯を食べ終わったから少しここを探検してみよう。
わかったことは沢山椅子のある部屋とがいっぱいあって、黒い机のある部屋、本が沢山ある部屋、四角い箱とコロコロ動く椅子がある部屋、絵が置いてある部屋があった。本が沢山ある部屋で本を読んでたからすっかり外が暗くなっちゃったから今日はココで寝ようかな。誰か来てもワケを話せばいいや。
本が沢山ある部屋で寝ようかな。床は絨毯みたいだし。
「おやすみなさい。」
この言葉は誰に言うものなんだろう…
1人の世界 ベーコンでべコン @su-37UB
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。1人の世界の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます