ダンジョンを15年かけて完全攻略した勇者が帰還すると、人類は衰退し貞操逆転していた

田中又雄

第1話 ようこそ衰退した人類の世界へ

「もう...人類は終わりだ」


 巨大なモンスターを目の前に絶望をした表情で少年はつぶやいた。


 ダンジョンが出現して9年、最初の数年こそ軍隊を使って、モンスターを排除しつつ、ダンジョンに潜ることができていたが、ここ数年は防戦一方...。

 あふれ出たモンスターを討伐するのがやっとの状態だった。


 こんな状態が続けばいずれ地球に人類が住める場所はなくなる。


 もう...人類に生き残る手段はない。

そういわれ始めていたころだった。


 少年の前にはA級のモンスター【ワンダードッグ】が涎を垂れ流しながら少年を見つめる。

少年に戦う術などない。もちろん、誰かに助けてもらうことも望めない。

もう...終わりだ。


 絶望した少年の肩に手を置く一人の青年。


 年のころは15といった感じだろうか。

日本人の顔立ちとどこか西洋を思わせる顔のパーツ。

おそらく、ハーフなのだろうということが分かる。


 そして、青年は一言こういった。


「...僕は勇者だから。安心して」


 そういうと、どこかから取り出した光の剣であっという間にワンダードッグの首をはねると、一瞬のうちにモンスターをどんどん倒していった。


「...勇者」


 それが勇者に関する唯一の証言だった。


 それから数か月後には地上にあふれ出たモンスターはすべて排除された。

原因は不明といわれていたが、少年だけは確信する。勇者のおかげだと。


 その後、勇者はどうやらダンジョンに潜ったらしくそれ以降たった一匹も地上にモンスターはあふれることはなく、2024年12月に...軍により行われた大規模なダンジョン調査の結果...ダンジョンは完全攻略されており、人類に平和が訪れた...はずだった。


 ◇2025年1月1日


「地上の空気は久しぶりだな...」と、厚手のコートにパーカーのフードを被った状態で街を歩く。


 約15年ぶりに地上に戻ってきた勇者はそう呟いた。


 流石に15年という月日は長いらしく...、東京という場所も2009年と比べてだいぶ様変わりしていた。

いや...正確には衰退していた。


 東京の中心部だというのに廃墟のようになって放置されたビル、シャッターが閉まり切ってしばらく開いていないだろうラーメン屋...それに男性向けの少しエッチなお店の看板もボロボロになっていた。


 まぁ、それでも普通に営業している店はあるし、完全に終わったというわけではないんだろうが...。

俺がいない間にいったい何が...。

それにこの違和感はなんだ...?


 とりあえず、色々話を聞こうと、適当な飲食店に入る。


 お店の中に入って違和感は確信に変わる。

そうだ...なにかおかしいと思っていたら、地上に戻ってきて俺はまだ男性を見ていない。


 お店の中には店員が数名、お客さんも数名...すべて女性だった。


 そして、俺を見た瞬間、まるで飢えた獣のような目つきに変わる。


「...お客様...もしかして...男性でしょうか...?//すごく、いい雄のにおいが...//」と、目をギンギンにさせている美しい20代くらい女性の店員さん。


 その瞬間、俺は瞬間、女性にメタモルフェーゼし「いえ、私は女性だ」と、フードを取って、女性らしい高めの声で言った。


 もちろん、体格的にいきなり女性にするのは難しいため、メタモルフェーゼしたのはやや男性風の女性といった感じの容姿になってしまった。


 女性と気づくと、少し興奮が収まったものの、「私は女性も全然いけますよ?//」と、なぜかウィンクしてくる。


「...遠慮しておく」


 しばらくは女性のままでいたほうがいいな...と思いながら、置いてあった新聞の見出しに目が行く。


【またも男性激減。このままでは絶滅か】


 そうして、なんとなく状況について理解する。

つまり、俺がいない間に人類は衰退し、男性は激減し、貞操逆転が起こった...ということか...。


「...いや、どういう状況だよ」と、少し低めの声で突っ込んだ。

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