オシッコが出ていない

 クロは今、固形物を摂っていない。

 食道チューブから専用の液体を流し込む。それが、癌になってからの彼の食事だ。

 前までは固形物を美味しそうに食していたが、今は叶わない。それが飼い主として、悲しい。


 話は変わるが、彼はおしっこしかしない。

 時折うんちもするが、殆どない。

 摂取しているものが液体なのだから、当然っちゃ当然なのだが。


 そんな彼はオムツをつけている。

 液体を常に摂取しているため、オムツを変える頻度は高い。

 きっと、元気に動き回っていた時より、排泄の回数は増えただろう。


 真夜中、クロのオムツを変えることができない。そのため朝イチに飛び起き、オムツを変える。


 いつも通り起き、彼の顔を拭いてオムツを変えようとした。

 ────しかし、その日おしっこをしていなかった。


 血の気が引いた。

 毎回、朝の四時には変える予定である。この時間にはいつもオムツがどっしりと重くなっているのだ。

 しかし、今日おしっこをしていない。


 ということはつまり、彼に何かしらの問題が起きている。

 私は戦慄した。


 「朝イチで病院へ連れて行くべきか?」と悩みながら仕事へ行く準備をする。

 有給申請をするかと悩みながら、もう一度彼の様子を見る。


 すると彼は────恍惚とした表情をしていた。

 まさかと思いオムツを覗き込むと、おしっこをしている。


 私は朝なのに「よかったぁ!」と叫んだ。

 彼の体に問題はなかったらしい。

 早速、オムツを取り変え、綺麗な状態を保った。


 これ以上、彼の体に異変があって欲しくない。

 なるべく、彼らしく生きてほしいのだ。

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