飼い猫が扁平上皮癌になりまして
中頭
飼い猫が扁平上皮癌になりまして
まず最初に、私はエッセイというものを書いたことがない。エッセイとはなんなのかも、よく知らない。けれど、どこかに自分の気持ちを書いて整理したいからここに記載して投稿している。
タイトルにもあるが、私の飼い猫が扁平上皮癌になった。けれど、ここにはその治し方や緩和ケアなどを書いているわけではない。ただの鬱々とした気持ちを晒すだけだ。とどのつまり、不甲斐ない飼い主のなんのためにもならない吐き捨て場である。
だから、救いの光を求めて読む人がいたら(まずいないとは思うけれど)他の箇所……例えばブログなどに目を通した方が良いと思われる。この世には素晴らしい文章を愛猫の画像付きでしっかりと記載している場があるので、そちらへ足を運ぶのが無難である。
唐突だが、愛猫が扁平上皮癌になった。獣医が言うには、猫には非常に多い病らしく、珍しいことではないそうだ。
箇所は上顎の喉付近。肉眼でも確認したが、ぶよりとした腫れ物が、私の愛猫を苦しめいている根元らしい。
愛猫の名前はクロ。名の通り、黒いからである。私にはネーミングセンスというものが無い。趣味で書いている小説に登場する人物も、思い入れがない場合は名前メーカーで作成している。
そのくらい、名前というものには無頓着だ。
初めてクロを目にしたのは、今から十一年前。バイト先の店長から「猫を拾った」と連絡を受け、受け取りに行ったのが出会いのきっかけだ。
ありきたりだが、クロは段ボールの中にいた。他にも数匹いて、まだ親が必要な年齢だった。みんなこちらを見上げ、子猫特有の人間を狂わせる愛らしい声で泣いていた。
その中で無作為に選んだのがクロと────ブチである。これは先述の通り、ネーミングセンスがないため柄のままつけた名前だ。どちらもオスで、特に理由があったから彼らを選んだわけではない。お世話になっている店長が「どうすればいい?」と困りに困っていたので、仕方なく引き受けたのだ。
元々実家で猫を飼っていたので、彼らを育てるのに特に問題はなかった。他の子達と同じように成長し、同じように暮らしていた。
彼らが病院に行ったのはワクチンやら去勢やらだけで、あとは本当に無縁だった。特にクロは大病もなく、とにかく優等生な子だった。
クロもブチも去勢をしたオスなので、それはもう恰幅の良いおデブちゃんに育った。どちらも甘えん坊で、寝る時にはすぐに走ってきて飼い主の脇にどちらが寝るかを争うほどだった。(これが私の最大のモテ期だろう。幸福なことである)
そんな彼は今現在、十一歳だ。この年齢まで、本当に何事もなく生きてくれていた。
しかし、その日は突然訪れた。
彼が血を吐いたのだ。吐血のような露骨なものではなく、血は食べたドライフードを吐いた時に混じっていた。
私はひどく驚いて翌日、すぐにA病院へ連れて行った。撮影していた吐瀉物を獣医に見せると「内臓が悪いのかな」とクロを隅々まで調べた。
しかし、彼になんの問題もなかった。
その後、薬を貰い、様子見という形に終わった。
話は変わるが、クロはとても薬を飲ませやすい子だった。他にも猫を飼っているが、大抵は苦味や異物に怯えて逃げてしまう。けれど、クロは口の中に放り込めばすぐに飲み込んでくれる扱いやすい子であった。
その数日間、A病院へ通いながら薬をもらい、クロの状態を伺っていた。
それと同時に、クロは何も食べなくなった。最初は病院へ連れて行ったストレスかもしれないと思っていたが、それでも食べない期間が長かった。おかしいと思った矢先、もう一度吐いた。その時はポツポツと鮮血が滲んでいた。
A病院へ行くと先生から「元気もないし痩せている」と指摘された。最初、クロはスタッフの方にも懐き、警戒心もない子だった。「犬みたいな猫だね」といわれるほどおおらかな子だった。一人暮らしをする際、実家から連れて移動した時も、彼はなんの警戒も抱かずお利口に対処していた。
けれど、その時は違った。怯えていたし、元気がなくなっていた。私は明らかにどこかがおかしいと思っていた。しかし、先生はそれを見つけることができない。もどかしさもあったし、動物病院の遠さからくる移動のストレスがクロを苦しめていた。
早めに結論を出して欲しいと思っていた矢先、先生があるものを見つけた。
それは口の中にあるポツリとしたできものだった。
最初は二人で「なんなんだろうこれは?」という感じで見ていた。(後から考えれば、先生はこの時点で気がついていたかもしれない)
やがて先生は「これが痛いから食事をしないのかもしれない」と言い、整腸剤と痛み止めをくれた。
しかし、それを飲ませていても、クロの体重はみるみる落ち(それはそうだ、食べないのだから)、薬も嫌がるようになった。無理やりご飯を食べさせ、気にいるものを模索した。少しでも食べるものがあればそれを買い漁り、少しでも胃に収めるようにと努力した。(その気に入ったものも数日で食べなくなるのだが)
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