最近、様子がおかしい美少女クラスメイト(自称名探偵)にダル絡みされてるんだけど、なぜか元カノ(超絶美少女な元人気子役)の様子がおかしくなり始めて怖い。待って先輩、ウォーミングアップを始めないでください
34. もしかして僕/私たち、入れ替わってるぅ〜!?
34. もしかして僕/私たち、入れ替わってるぅ〜!?
溢れる涙を拭いつつ、なんとか視界が少しずつ戻ってくる。
「体験会開催中でーす。いかがですかー」
涙でぼやける視界の中、デパートの中では異質な雰囲気のブースが映り込んだ。
僕より一回りはあるであろう大袈裟なトンネル型の機械に、接続されたケーブル類。
その横に座ってるは、事務用の机に数台のパソコンとモニターが設置されている。
「最先端VR技術の体験会、開催中でーす」
ブースに立つお姉さんの声に、僕の耳が敏感に反応する。
ほう、最先端VR技術とな。これはオタクとして黙ってはいられない。
「こんちはー。なにしてるのー?」
興味を持ったのか、とことこ歩いて行った茅野センパイが声を掛ける。
「はい、こんにちは。現在、最先端VR技術の体験会を行っております」
藤宮さんと楪、遅れて僕もブースへと向かう。
入るや否や、大きなトンネル型の機械を物珍しそうに藤宮さんがスベスベ触る。
「すっごーい。このおっきな機械って、何に使うんですか?」
こら、勝手に触らないの。壊しちゃったらどうするのあなた。
「こちらはスキャナとなっておりまして、こちらから取得したデータから自動モデリングを行い、モーションキャプチャ―を体験する事が出来るブースとなります」
「も、もでりんぐ?もーしょんきゃっちゃー?」
頭上に大きく?の字を浮かべる藤宮さん。名探偵、現代の機械には弱い設定なのかな。
……いや、別に現代の機械じゃなくても弱いか。
お姉さんからパンフレットを受け取った楪が、その中を軽く読み開く。
「つまり、ここに立っている人からデータを取って、モニター上でその人の見た目になれるって事ですよね。……いうなれば、デジタル変装みたいなモノなんでしょうか?」
「そうなりますね。是非、体験いかがでしょうか?」
優しく微笑むお姉さんの前、興奮した藤宮さんが八重歯を見せたまま激しく左右に揺れる。
「デジタル変……装⁉」
この時、既に「最先端VR技術ゲームは体験したいけど……完成されたゲームの世界に三次元の僕の要素を入れるのは嫌だなぁ」と静かに離脱しようとしていた僕の腕は藤宮さんにしっかりホールドされていた。
なので、僕は同じく逃げようとしていた楪の腕をしっかり組んで道連れにする。
ちなみに茅野センパイはブース反対側のサービスカウンターで、お兄さんから風船を受け取っていた。せめてブース内に居てくれ。
「はい、では測定を始めますね」
ずっと笑顔のお姉さんに案内されるまま、僕らは順番にトンネル型スキャナの中に立つ。
「はーい!」
「ここで大丈夫ですか?」
「……うす」
「おー」
コピー機みたいな音を鳴らしながら、大型スキャナが駆動する。
中央に立つ人をぐるりと囲う形で、何回か内部の機械が回転した。
「はい、ありがとうございます。測定完了です」
お姉さんに支持された通り、僕らは隣の少し開けたスペースに移動する。
すると、そこにはVRゴーグルとコントローラー、何台かモニターが設置されていた。
「では、こちらのエリアで先ほどスキャン頂いたデータから体験いただくことになります」
コミュ力の高そうな笑顔のお兄さんが、爽やかに説明を始める。
「すみません。VRゴーグルの個数の都合上、お二人ずつの体験となりますが……どなたから体験されますか?」
楪が「画面酔いしやすいので」と胸の前で×マークを作る。
茅野センパイは、VRゴーグルが重いのかバランスが取れず転んでいた。かわいい。
と、いう訳で。僕と藤宮さんで体験する事になった。
「では早速、キャプチャーを始めますねー」
お兄さんの声と同時に、VRゴーグルを通してぼんやりと光が灯る。
その光は徐々にピントが合っていき、視界もクリアになっていく。
「はい、同期が完了しました!VRゴーグルを付けた方は後方の鏡をご覧ください」
後方の鏡?
慣れないVRゴーグルに軽くバランスを崩しつつ、僕はゆっくりと振り向く。
そこには、いつもより寸分低い視線に柔らかそうな頬と、見慣れた白いオーバーホール。
「す、すっげぇ!」
鏡には完全に、茅野センパイが映っていた。
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