オカルト考察系動画配信者、仲島勇水の主観 1
「………」
僕――つまり、
そこには、僕が取り纏めた十個のワードデータがタイトル順に並んでいる。
■001 幽霊って見たことある?(158)
■002 (◉ ‿ ◉)(29)
■003 今日駅前で「神様を信じますか?」って声かけられたから(258)
■004 泥酔して気付いたら知らない場所にいた件ww(289)
■005 作家ワナビが集うスレ329(1001)
■006 団地暮らしが語り合うスレ(62)
■007 ヨジリ様ってどこに行っちゃったの?(3)
■008 昔の教育テレビって不気味な番組多かったよな(104)
■009 (◉ ‿ ◉)の正体について考察するスレ(87)
■010 みぃんなだいすきだよ。(135)
これらのデータは、僕がインターネット上のある大型掲示板サイトに投稿されたスレッドから、その書き込みの一部を抽出し取り纏めたもの達である。
最初は、単に“怖い書き込み”を探していただけだった。
昔から、この大型掲示板には心霊関係のスレッドが多く建てられ、今でもその界隈の人々の記憶に残り、話題に上がっては考察がされているものも多い。
何かネタになるものはないかと、過去のデータを検索してみたのだ。
■001 幽霊って見たことある?(158)から、■004 泥酔して気付いたら知らない場所にいた件ww(289)。
この四つを発見し纏めていた時までは、まだ単純に“怖い書き込み”を抽出していただけだった。
状況が変わったのは、■005 作家ワナビが集うスレ329(1001)を発見してからだ。
このスレッドは、某大型掲示板の中でも老舗のもので、いわゆる小説家志望者達が集まって雑談や質疑応答を交えるスレだ。
真偽は不明だが、そのスレから巣立ったとされるあるプロの作家が新作の製作発表をし、そこから様子がおかしくなっていくまでの一連の流れが投稿されている。
投稿されているのは、このプロ作家――
ちなみに、この神中筆人のSNSアカウントは既に削除されているのか、今は存在していない。
「………」
自分が気になったのは、この神中筆人が投稿したつぶやき――ではなく、彼のアカウント名だった。
神中筆人@繧「繝?繝舌A讒 @hudetokaminaka : 2017.2.01 03:24
手を出すんじゃなかった
序盤、彼はアカウント名を『神中筆人』から『神中筆人@新作準備中!』に変更していた。
クリエイターアカウントが、自身の名前の後ろにその時抱えている案件を宣伝も兼ねて付け加えるのは珍しい事ではない。
神中筆人は時間の経過と共に様子がおかしくなるに連れ、アカウント名も常軌から逸脱していく。
終盤では、『神中筆人@繧「繝?繝舌A讒』と文字化けを起こしてしまっている。
僕はふと気になり、この変形してしまった文字列を、文字化け復元サイトに入力し元の形に戻してみた。
すると、出たものが下である。
『アダバ?`?』
……一見すると、何も意味を成していないように見える。
だが、これによく似た文字列が、僕が収集したワードデータの中にあることを思いだした。
4:名無しさんの行方は知れない 2008/01/30 14:23
アダバミサマアダバミサマコチラデス。
■003 今日駅前で「神様を信じますか?」って声かけられたから(258)内に連投されていた謎の言葉。
その中にある、おそらく固有名詞と思われる単語――『アダバミサマ』。
神中筆人は、新作の小説を執筆中に発狂したと思われる。
その新作の概要に関し、彼は終盤のツイートでこうほのめかしていた。
雍?エ?エ?エ@繧「繝?繝舌A讒 @hudetokaminaka : 2017.2.09 10:24
恋愛ストーリーだったんだよ最初は神様との
「………」
アダバミサマという、恐らく神様を思わせる名称。
そして、神様との恋愛ストーリーを書いていたという神中筆人。
ちなみに、上記のつぶやきを投稿していた時期……文字化けは神中筆人の名前にまで浸蝕してしまっているのがわかる。
『雍?エ?エ?エ』を、同様に文字化け復元サイトに入力してみたところ、出てきた文字は……。
『?贄贄贄』
「………」
神中筆人は、一体何に関わってしまったのだろうか。
現時点でSNS上のアカウントが消滅し、作家としての新刊が発表されていない彼のその後を知る術はない。
彼の書籍を刊行している出版社に連絡をいれるという手もあるが、単に契約関係を結んだだけの作家に関しどこまで素性を知っているのか不明だ。
そもそも、彼はデビュー作を出した出版社とも喧嘩別れしているようだし。
しかし、とにもかくにも、僕はこの時思ったのだ。
片や、2008年のスレッドで現れた言葉が、時を経て2017年、無関係のはずの他のスレッドにてその片鱗を見せた。
これは偶然か?
それとも……この掲示板内には密かに、関連性を持つ何かがもっと隠れているのではないか。
そう思った僕は、以降、その観点からデータを収集する事にした。
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