第8話

私はグラスの中で溶けゆく氷を見下ろしながら答える。




「捨てたくても私の人生って何ゴミなんですか、粗大ゴミで回収してくれるの?」




男がグラスから口を離し、愉しそうに鼻で笑う。




「じゃあ俺が拾う。」


「は?」




サングラスの奥の瞳が細められたのが、透けた黒の先に見えた。



未だに愉しそうに笑みを浮かべた男が、白い歯で微かに下唇を噛む。それはまるで悪魔のような笑み。





「何もないお前の中、俺で埋めてやるよ」





部屋の隅、ふたりだけの空間。愛を密かに紡ぐとっておきの暗がりの中で、私たちだけが挑発的な視線を交わし合う。



男の掠れた声が酔った頭に刺激を注ぎ込む。

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