第3話 わたしのことはほっといてください!
シェアハウスに入居してから、少し立った日。
今の時刻は8:00
俺は朝食の準備が終わって、洗濯物をたたんでいた時だった。
「おはよう!颯くーん!今日もいい天気だねー!」
「ねむい...」
今永さんと新藤さんが起きてきた。
「今永さん。新藤さん。おはようございます。
もう朝食できているので先に食べててください」
「おぉー!颯くんのご飯おいしいから、期待大だねぇ!」
「楽しみ...ワクワク」
そう。俺は料理ができるいわば家庭的な男だ(自称)。
一週間前にはじめてご飯を出したとき、三人は目を丸くしていた。
「すごいすごい!颯くん、料理できるの!?」
「はい。一人暮らしをしていた時によく自炊してたので...」
「にしてはプロレベルの出来栄えだよ!」
「うま...!!うま...!!」
二人はおいしそうに食べていたが、長浜さんはずっとご飯を見ているだけだった。
「長浜さん?どうしましたか?何か苦手なものでも...」
「___です」
「え?」
「気遣いなんていらないです!私のことはほっといてください!」
そういって長浜さんはリビングを出た。
「もぅ、かなちゃん。颯くんのことまーだ毛嫌いしているんだから...」
「うん。いい加減素直になればいいのに...」
「あ、アハハ」
と、今に至るまでまだ長浜さんとはあの状況だ。
二人は席に着き、いつものように朝食を食べ始めた。
「あれ?今日長浜さんが来ないけど、どうしたんだろう」
長浜さんは俺のことは嫌っているが、たまに飲み物を取りに部屋から出る。
だが今日は一回も部屋から出ていない。
「かなちゃん、昨日から高熱出しててインフルエンザみたいなの、
かなちゃんは、看病しなくても大丈夫とは言っていたけど、
すごい体調が悪そうだったから...。
それに、私と由奈ちゃんは学校だから、
颯くんがかなちゃんのこと見てくれるかな?
夕方までには帰ってくると思うから!」
「私からもお願い...
奏姉さんに何か言われるかもしれないけど、
颯が見ていてあげてほしい...」
今永さんと新藤さんが真剣な表情でお願いしてきた。
今日はたまたま授業をいれていなかったので、俺だけ休みだ。
そんなの、答えは一つしかない。
「はい!わかりました。任せてください!」
二人が学校に行った後、俺はいま長浜さんの部屋の前にいる。
「長浜さーん、体の体調はどうですかー?おかゆ持ってきましたー」
ドア越しに聞くが、返事がない。
「長浜さーん?はいりま...!!?」
中に入ろうとしたときにドアが静かに開き、
顔が真っ赤な長浜さんが顔をのぞかせた。
「長浜さん!?顔が真っ赤ですよ!今は安静にしててください」
顔が真っ赤なこともそうだが、何より体が震えている。
「私のことは気にしないでください。
未空さんや由奈ちゃんになにか言われたかもしれないけど、
余計なお世話です。さっさと戻ってください」
「いや、でも...」
「しつこいですね!私のことはもう__」
「いやです。ほっとくわけにはいきません!だって、
大切なルームメイトだから...」
「っ!!.........」
やばい。めっちゃ恥ずかしい。
つい突拍子もなく言ってしまったけどこんなこと誰にも言ったことない...
(異性との関わり皆無)
「___です。」
「え?」
「あなたは、わからない人です。
私はあなたにずっと冷たい態度をとっていた。
でも、そんな人にでも優しくする。
どうしてあなたはそうゆうことができるのですか?
普通の人なら、放っておくことが多いのに...」
長浜さんはいつもとは違う表情で俺を見ていた。
「なんでって言われても...困っている人がいるから...かな?」
「フッ...何ですか、その理由。全然答えになってないじゃないですか」
それは、曇った空から顔を出した太陽のような笑顔だった。
「私、何やら勘違いしてたみたいですね。
男はみんな同じような思考回路だと思っていましたが、
あなたのような優しい人間もいるんだと...」
ギュッ
長浜さんは俺の手を握った。
「え!?ちょっ!長浜さん!?」
「不思議です。
男の手なんて、お父さんでも触りたくないのにあなたの手はすごく温かい。
フフフ、あなただけは特別みたいですね」
そしてしばらく俺は長浜さんの部屋に居座って看病していたが、
翌日見事に高熱をだして、学校を休んだことは別の話。
おまけ
「颯くん、奏ちゃんと仲良くできてたみたいでよかったねぇー!」
「うん。正直、ちょっと不安だった」
「わたしもだよぉ!よーし!これからみんなでたくさん思い出を作っていこー!
てことで、今日の夜!第2回歓迎会をやるぞー!」
「私は眠いからパス...ZZZ」
「由奈ちゃん冷たーい!!!」
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