第24話◇つながらない電話◇
瑠璃子の声は木村に聞こえていないようだった。瑠璃子は電話を切って、もう一度木村の電話番号を押した。
「もしもし。沢田です。」
「もしもし?沢田さんですか?もしもし、もしもし。」
やはり木村には聞こえていないようだった。木村から掛かってきた電話は繋がるかもしれないと思い、しばらく待つと案の定掛かってきた。急いで出たが、やっぱり木村には瑠璃子の声は聞こえていないようだった。
「なんで?妨害電波?空港だから?」
メールも試してみたが返信はなかった。瑠璃子は携帯電話を諦めて、一階のフロア―に降りてインフォメンションセンターにいた案内の女性に公衆電話がないか聞いた。女性は、瑠璃子の後方を指さして言った。
「あちらにございます。」
瑠璃子は、公衆電話に駆け寄り、木村の携帯の番号を押した。コール音の後に木村の声がした。
「もしもし、沢田です。」
「もしもし、もしもし。」
今度も木村に瑠璃子の声は聞こえていなかった
「公衆電話でも通じないってどういう事?会うなって言う事?」
瑠璃子は、どうしたら良いか分からず途方に暮れた。独り言をつぶやきながら歩き始め、二階の保安検査場へ向かう事にした。時計を見ると五時半だった。二十分も空港の中をうろうろしていた事になる。今の時代、連絡がつかない事があるなんて考えてもいなかった。瑠璃子はとりあえず、木村が待っていると言った二階にあがってみる事にした。漠然と保安検査場の前といっても、待ち合わせで有名な渋谷のハチ公前じゃないが、空港はとても広く日曜日の夕方は人も多かったので、このまま電話が通じないと会えないだろうと思った。不安を抱きながら二階へ向かう長いエスカレーターに乗って上をぼんやり眺めていると電話が鳴った。画面を見ると木村だった。
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