第22話◇まちあわせ◇
会場内にいた係の人が、手を挙げた人の所にマイクを持って行った。
「ありきたりの質問などしなければ良いのに。」と、イライラしながらまた時計を見ると四時十分だった。質疑応答が終わると、司会者はまた同じ事を言った。
「他に質問はありませんか?」
「遠くから来ている人も多いのだから定刻に終わるべきだ。」瑠璃子は心の中で訴えたが今更席を立つわけにもいかず、壁の時計を見ては「早く終わりますように。」と、何度も祈った。司会者が言った。
「質問も無いようですので、これで閉会とさせて頂きます。それでは閉会の挨拶を会長にお願い致します。」
「えー。まだ終わらない?挨拶?勘弁して。」瑠璃子は、心の中でつぶやき、諦めと苛立ちを感じながら時計を見つめるしかなかった。会長の話が終わりやっと閉会した。時計を見ると四時十五分だった。木村とは羽田空港で五時に待ち合わせしていた。瑠璃子が急いで会場を後にしようとした時、背後から瑠璃子を呼ぶ声が聞こえた。
「沢田さーん。」
立ち止まって振り返ると前にも研修会で一緒になった岡山の川島さんだった。
「お久しぶりです。」
瑠璃子は流行る気持ちを押さえて歩みを止めて挨拶をした。
「あなた、どうやって帰るの?」
「私は、飛行機です。羽田空港へ行きます。川島さんは?」
「新幹線よ。」
瑠璃子は時間が気になったので歩き出した。川島さんも、瑠璃子につられて歩きながら話し続けた。
「最近孫が生まれたのよ。見て可愛いでしょ。」
川島さんは、スマホを取り出し、写真を見せた。
「可愛いですね。女の子ですか?」
「そうなの。うちは子供が男の子ばかりだったから、可愛くて仕方がないのよ。」
会場から市ヶ谷の駅までは歩いて十分程かかった。その間、川島さんは娘が里帰り出産し、孫が来ているので、気晴らしに今日の研修会に来たのだと言った。
「孫もねえ。かわいいけれどずっといると疲れるのよ。生活のリズムが違うでしょ。寝たいとき人られないし、起きたいときに起きれない。見たいテレビも見られない。自由にで歩けない。ストレスたまるのよ。あなたはお孫さんいないの?」
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