第12話◇接待◇

「良い香りね。」

「今度、「れもん薬局」で扱う事になったのですよ。良かったら試して下さいね。」

 瑠璃子が言った。

「ほんと?私アロマに興味あるの。石鹸作った事あるよ。今は商品ないの?」

「また商品が入荷したらおお知らせしますね。」

「私ね。匂いにはとても敏感なの。最近ね、柔軟剤や洗剤に芳香剤が入っているでしょ。」

「叩くと匂う。」

「そうそう、あれダメなのよ。鼻がムズムズして。」

「そうですか。」

「これは鼻がムズムズしないね。」

「これは天然から抽出している精油ですから。

 木村が説明した。瑠璃子は三上さんをレジ横のカウンターに導いた。その間木村は、気を利かせて駐車場の車の中で待っていた。三上さんは、「オイルが入ったら知らせてね。」と、言うと買い物を済ませて店を後にした。二十分ほど車で待っていた木村が入ってきた。

「すみませんでしたね。お待たせして。」

 瑠璃子が頭を下げると木村が言った。

「こちらこそ。勝手に待たせて頂いて申し訳ありませんでした。実はお伝えしたい事があったものですから。」

「何かしら?」

「私、東京から来るので滅多に来られないのですよ。ですから営業でこちらに来た時は、中村さんとお食事をご一緒させて頂いているのですよ。」

「そうですか。」

「お店では今のようにお客様が来られると、ゆっくりお話しできないものですから。」

「そうですね。」

「急で大変申し訳ございませんが、今夜ご都合はいかがでしょうか?」

 突然の事に瑠璃子は戸惑ったが、佳乃子も一緒というので、聞きたい事も沢山あり了承した。

「良かったです。いつも中村さんのお店の隣のおしゃれな日本料理店で食事をするのです。よろしいですか?」

「良いですよ。私はどこでも。ティートゥリーは、今治では飲食店が集まっている場所ですからね。」

「お店は何時迄ですか?」

「七時迄です。」

「それでは七時にお迎えに参ります。」

「良いですよ。私、車で行きますから。」

「沢田さんは、お酒を召し上がらないのですか?」

「還暦が近くなってから、前ほど飲めなくなって。飲まなくても平気です。」

「中村さんといつもご一緒させて頂くお店は、日本酒の種類が多くて、お料理にとても合うので、是非召し上がって下さい。」

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