第8話 江戸橋高等学校入学式

時の住人の調整力で気づくと私は入学式の列にいた。

一年生だ。

後ろの女子が私の肩をトントン。

「私はミク、ヨロシク。あなたは?」

「私はアリア。ヨロシクね。」

「でもアリア、校長先生の話長くない?

聞いてるの飽きちゃったんだけど。」

「確かに。そうね。前の学校、バシエル校の時も無駄に校長先生の話って長くて退屈したわ。」

「えっ?アリア、あなたって帰国子女?

バシエル校って?」

しまった。つい前の世界、400年前のことを口にしてしまった。

気をつけよう。

「ごめん。ミク。帰国子女でもなんでもないわよ。」

「そう。」ミクはあっさり。

2030年のこのエド大陸の女子は、話の深追いはしないようだ。よかった。

たぶん、単なる感だけど、年代が新しくなるにつれて人間の気持ちや感情は薄くなるみたい。私にとってはその方が都合がいいけど。

「アリア、やっと校長先生の話、終わったわよ。次は2年生?

生徒会からの話しみたい。見て、見てアリア。

あの生徒会長かっこよくない?」

私は目をこらした。確かにかっこいい。

が朝であった二人だ。

生徒会長は確かシュンって名前だった?

アリュースに似た優しく冷静な優等生タイプの方だ。

「そうね。ミク、かっこいいかも。」

「でしょう。ああいう優しくて聡明なタイプのイケメンいいよね。ゴリ押し的な、無駄な力が無くって。

それに2年で生徒会長だなんて、きっと頭もいいのよね。」

「たぶんね。」口に出したが、たぶん彼は頭がいい。

それにミク。イケメンの話はどの時代の女子も好きな話題だ。

何とかこの2030年の世界で私、やっていけそう。無意識にニヤリとした。

ミクが「アリア、何、ニヤリしてるの。生徒会長のこと一目ぼれでもしたのかな?」

「えっ?そんなことないわ。ただ何となくよ。」

「へえー。なんとなくね。まあ、いいわ。でも話も終わったみたい。」

アナウンスが流れる。

「1年生は教室に向かってください。」

私達は1年1組。みんなと教室に向かった。

教室に着くと席は決まっていた。ミクとは運よく隣の席だ。

ミクが「アリア、ラッキー。またいっしょね。

これは運命ね。ほんとヨロシク。」

「こちらこそ。」

はじめてのクラスでみんなざわつている。

前の席の男子が振り向く。

「俺様はレオ。イケメンのレオだヨロシク。」

ミクがつっこむ。「レオ、男子が自分で自分のことイケメンなんて言わないわよ。

おかしいよ。自意識過剰。でも・・・」

私は、ぽつり。「でもレオかっこいいよね。」

ミクが「えっー!そんなストレートに言う?

アリア大胆!」

「えっ?そんなことないよ。正直に言っただけよ。別に好きって言ってないし。」

ミクが笑いながら「そうね。確かに。

アリアってすごい。なんか女王様みたい。」

確かに私はアルタ王国の女王様兼悪魔のガーゴイル帝国の女王様らしい。

王族の言動がつい出てしまった。

王族はみな基本正直だ。

自分を取り繕わなくてもいい。

忖度なしで言葉を発することができる。

さすがに俺様キャラのレオも戸惑っているようだ。

「レオ。そういうことだからヨロシク。

私はアリアよ。」私はいつも通りで挨拶した。

名前を言った瞬間、レオの顔色が少し変わったがすぐに「アリアか。ヨロシク。それから横のお嬢さん名前は?」

「私はミク。ヨロシク。それにレオ、

アリアにちょっかい出さないでよ。

アリアは少しみんなと違う。なんていううか、ちょーお嬢様みたいな。そんな感じだからさ。」

「わかりました。ミク様。」

「こらレオ、からかわないの。でもレオよく見るとさっきのイケメンの生徒会長に似てない?」

「あーあれは2番目の兄貴だ。そして一番上の兄貴は・・・」

教室のドアが開く。「みんな席につきたまえ。僕が1年1組の担任。時本ゲンだ。」

女子達が一斉に「キャー!時本先生、イケメン。」騒ぎ出す。

レオが「あれが一番上の兄貴。ゲンだ。」

キャーキャー騒ぐ声の中、ゲン先生の目が、 ギロリと私をにらんだ。

何?今の?この怖さ。

まさかゲン先生が黒いマントの男?





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