第3話

 「ユウさんがもう駄目だと思うなら、残りの人生俺に下さいよ。」






 事務所が同じで、後輩である綿貫わたぬき昂生こうせいは今飛ぶ鳥をも落とす勢いで売れている人気俳優である。

 



 去年主演を務めた映画でアカデミー賞の優秀主演男優賞を受賞。

 その他にも去年出演したドラマや映画だけで10本を超えている。

 またドラマの主演作品は今年に入り既に3作品目で、新たに映画の主演も決まっている。

 CM起用数7本に加えて、テレビ、バラエティ番組への出演依頼が殺到。

 まさに今、誰よりも多忙を極めている男だ。




 その容姿はというと。

 程よい形の眉。程よい形の唇。二重瞼。黒い瞳。

 すっと通った鼻筋。




 顔に整った、各々おのおののパーツが、パズルのピースのように完璧に当てはまっている。

 まさに欠点のない美しい男。

 



 うっすらアッシュが入った、少し長めの黒髪。

 しばらく、この髪型を真似る男性が世間に続出した。




 背が高く、32歳とは思えないほど体は引き締っている。




 私服はいつもモノトーンにまとめ上げた大人コーデで、話す時は澄んだ低音の声。

 香水は爽やかなマリン系。




 そんな彼がこんな落ち目女優の私に。



 

 「一体………何の冗談?」




 その言葉を自然と発生させる程に。

 おかしな提案をした。

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