ユリの冒険

福田英人

第1話 壁

 ユリは人の魂として、生まれた。性別は明示しないでおく。優しく、臆病な人の魂だ。ユリの親は、神オルの娘のエリと獣ロアの息子のテューであった。エリはオルの理想であり、テューはロアの情熱だった。エリはテューと恋に落ち、生命の樹に触れて、ユリを生んだ。


 この事実にオルは衝撃を受け、深く傷付き、絶望した。オルは、娘を高い壁の内側にユリと共に閉じ込めた。とても高い壁だ。それはオルのエリに対する愛の高さだった。


 ユリは、その高い壁を見て、生きてきた。ずっと思っていた。壁の外側には何があるんだろう? どんな事が起こるんだろう?と。


 壁の内側は平和で退屈だ。ユリは日常に飽きていた。飽食と協調も約束されていた。宥和が、そこにはあった。だが、ユリの好奇心は、それでは満足が出来なかった。壁の外側に出る。それがユリの希望となって行った。


 だが、立ち塞がる高い壁。それがユリの希望を尽く打ち砕いていった。ユリは、強い失意と深い悲しみに暮れるのだった。高い壁の麓で。

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