『合成師』はハクスラ人生を満喫しています~SSRを作れない奴なんて要らないと捨てられたので、俺は自由に奇跡のアイテムを求めて商売と旅をします~

@sakumon12070

第1話

「クラフト! またゴミ作ってんのかよ。いい加減SRの武器の一つも作れねえのか!?」「いや、下手にレアリティを上げるより、このままの方がずっと性能は上なんだ」

「NRなんかぶら下げてこの迷宮に来てるのは俺達くらいのもんだ……すれ違う冒険者同業者に笑われるのはもうゴメンなんだよ!」


 俺、クラフトの前で持っていた剣を硬い鉱物に叩きつけて折ってしまう……我らがパーティリーダー、短い金髪のリンネス。


 それを俺は拾い上げて、その鉱物にも手を触れてただ唱える。


 ○NR:折れたロングソード

・物理ダメージ50~67

・耐久値3/160

・斬撃強化(小)

・アタックスピード+10%

 ○


「『合成』……ダンジョンで武器を折ってちゃ話にならねえぞ」


 すると、折れた先から新たな刃が生えてきて、以前より丈夫な剣が出来上がる。鉱物をそのまま使ったせいで多少でこぼこしているが……まだ使えるはずだ。


 ○NR:鉱石混じりのロングソード

・物理ダメージ80~85

・耐久値280/280

・斬撃強化(小)

・アタックスピード+10%

・重撃ダメージ+20%

 ○


 しかし、リンネスはそんなものには目もくれずわめき続ける。


「こんなゴミ、捨てた方がマシだっつってんだよ! ああ、『合成師』なんて珍しいからってパーティに加えるんじゃなかったぜ。スタートからよっぽど遅れちまった……!」

「そうは言うけど、冒険者になって数年でBランクのダンジョンに来られるなんて十分じゃねえか。何が不満なんだよ?」

「本当ならもっと上に……Sランクも夢じゃなかったはずだ! こんなゴミ装備でここまで来られたんだからな。本当の実力はこんなもんじゃねえ……全部、お前のせいだ!」


 ああ、なんだ。つまりこれは……。


「俺はクビだって話か?」

「それだけじゃ足るかよ。手段も選んでられないせいでこっちは悪評まみれでな……そこで、だ。全てお前の責任にして死んでもらう事にした!」


 その瞬間、俺はいつの間にか背後に回っていた戦士に羽交い締めにされ、呼吸もままならないうちに魔法使いによって縄で縛り付けられた。


「ぐっ――!? お前ら……!」

「悪いな、リーダー命令だ。安心しろ、後には高レアリティを見つけやすい奴を入れるからな」

「そんなもん、雇用だけでいくらかかると思ってんだよ!」


 そんな叫びに、魔法使いが鼻で笑って答えた。


「あなたの資産を使えばギリギリで足りるわ。知ってるんだから、あなたがへそくりを貯めてることは。どうせ、汚い金でしょう? 死人に預けるよりは有意義に使わせてもらうわよ」

「……腐ってやがる」


 そう呟いた瞬間、リンネス達は大きな笑い声を上げた。体を縛られたまま俺は背後にあった崖に落とされる。


「じゃあな、役立たず……死んだ後くらいは、役に立ってくれよな」


 それが、俺が見た最後の光景だった。後には、ただ落下の感覚のみ……。


 ◇


 あんな場所から落ちたらそりゃ死ぬに決まってる……が、おそらくリンネス達の想像を凌駕する肉の塊が俺を受け止めてくれた。ぐちゃぐちゃの肉にたかるハエ、とても助かったとは思えないが。


「いってえ……あいつら、マジかよ。ダンジョンの底なんてゴミ捨て場以下じゃねえか。そんな所に仲間を捨てたなんてなればいよいよ問題に……ま、そのくらいの悪評は今更か。やり過ぎなんだよな、あいつらいつも……」


 しかし、俺が死ねばそれまで……戦死者として数えられるだけか。だったら、生き抜かなきゃな。


 周囲にあるのはとっくに腐りきった死体やどこにも捨てられないようなガラクタばかり……。異臭もひどければ食べ物一つもありゃしない。こんな場所、朽ち果てて死んで当然だろう。


 だが、俺だってただの冒険者じゃない……ゴミから宝を生み出す『合成師』だ。


「やるか……『合成』」


 俺にとって縛り付けられた縄なんて大した問題じゃない。ただ二つの物質があれば、『合成』できる。


 ○NR:縛るロングソード

・物理ダメージ90~115

・耐久値150/150

・斬撃強化(小)

・アタックスピード+10%

・重撃ダメージ+20%

・『縛り付ける』

 ○


 そして、わらわらとやってくる見たこともない低下層の魔物達……よほど飢えているのか、ヨダレを垂らし俺という餌を包囲するように……狼型の魔物が前線を張り、巨躯を持ったオーク達がその背後で並ぶ。


「はっ、こんな所に捨てたくらいで殺したつもりかよ……俺は、奇跡のアイテムに出会うまでは死ぬわけにゃいかねえんだよ……!」

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