2. N-université 《N大学》

A la N-université

- N大学にて -


- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

- 付属図書館 -


◇◆ Gaëlガエル ◆◇


クリスマス休暇に入って数日……もう年の瀬だが、研究が全く進んでいないので今日も大学病院の図書館にいるが、勉強を……していない。


あ、俺はガエル!非魔術師で医学部3年の!

忘れてただろうから自己紹介しとくね。

え、忘れてない?俺ってそんなにキャラ濃い?へへ、それはよかった。



あれから俺は先生の研究が頭から離れない。

行方不明になった魔術師のサンプル……なぜ一目見て分かったか。


それは、そこに並んでいたのが、フレデリックの友人の名前だったからだ。

俺とフレデリックとはバイト先で知り合った仲だった。学部は違えど同じ大学という共通点もあり、プライベートでもかなり仲が良かった。だから、フレデリックの友人にも何人か会ったことがある。



その友人たちが、立て続けに失踪した。

俺は顔見知りだったから印象に残っている。



そうしてその数日後……フレデリックはこの世界から消えてしまった。

お前……今回の一連のことと、何か関係があったのか……?

もっと、俺のこと頼ってほしかった……!

だって、だってあの後、お前のがお前の後を追って逝ってしまったって、聞いた。


……かあちゃん、絶対泣いてるぞ


フレデリック……あいつはんだ。そして、その魔法も……《未来予知》も。

だから愛称を込めて呼んだ、 " 出来損ない "フレデリック。

それはあいつにもわかっていたはずだ。



そうでもしないと、どこで誰の目がフレデリックを狙っているか、わからなかった。

だから「こいつ、魔術師だけど魔法を使えない出来損ないなんだよな」って言って、守った。

実際、ストーカー紛いの被害にも遭ってたらしいけど、あいつあんまり言わないんだよな……



みんな、フレデリックが大好きだったんだ。

フレデリック……戻ってきてくれよ……



だけど今回見たことは誰にも相談できない。

俺の家は地方で復興が進んでいない。だから未だに実家は仮説住宅だし、俺は奨学金を借りて大学に通っている。

留年するお金なんてないから、教授に目をつけられたら終わりなんだよ……


- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -


A la hôpital affilié

- N大学付属病院にて-


◇◆ Rémiレミ ◆◇


ギヨさんの容態はあれから安定している。


どうやら手術は上手くいったらしい。

あの後魔術師の医師も来て、その後の処置もしてくれた。



あの魔術師……すごかったな。手術手技の正確さと速さに思わず見入ってしまうほどだった。


淡々とした手術。精密機械のような緻密さ

随分若そうに見えたけど、どうしたらそんな技術が身につくのだろう。

そして、彼の《特殊魔法》と呼ばれる魔法……



実際の術野は眩しくて、何が起きているのか分からなかったけど、光が消えたその時、壊死していた【魔導基部】は綺麗になっていた。


凄かった。全ての疾患を彼が診られたら我々一般医等要らないと思うほどだ。



これが、魔術師……



淡いアイスブルーの髪にオッドアイが印象的な、鋭く整った目鼻立ちの医者。

厳しそうだしドライな雰囲気に見えたけど、話してみたら意外と温和な人だった。

……以前どこかでお会いしたことがある気がするのだがどこだっただろう。

もしかしたら時々こうして後処置に来たりしているのかもしれない。



彼ほどの腕前の医者がいれば、8年前の有事の際だって……


……8年?


……



……8年前、彼はどこで何をしていた……?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る