1980年代生まれの僕ら
ユーズド
第1話
私は、快く約束を破り、コートの襟に身を潜めた。
何をしたわけではない。いっそのこと病にでもなれば、同情を買える。煙草は身体に悪い、この大流行りが煙草産業にダメージを与え、事実、私はこの毒に縋(すが)っている。
死にたい
私からすれば、これは高尚な作家の言葉であるが、これは大昔からの言い伝えにあるようなものだ。死にたくて、仕様がないんです。とでも言いますか、キザ・・・確かにそうなのだ。誰から同情を買うのか、そういった話は友人との酒の肴にした方が却って有意義といえる。
さて、この模倣作のようなものに、オリジナリティーを求めている私はどうしようもない間抜けであるが、自らを卑下しているということが正にその部分、取って付けたようなオリジナリティーなのである。粗末な冒頭こそ、コンプレックスの塊、その姿を曝け出している。しかし、このような悪態をつく作者であるからと、この先に書く私の一生の断片までを蔑まれては、やはり私はあなたの優しさに縋りたいのです。
大都会の生温い空気が国道246号線をタクシーの群れと共に走り抜けていく。この独特な空気はやって来るわけではない、独特な臭気として留まることなく抜けて行く。田園都市線、渋谷から三駅目、神奈川方面へと下って行く、この事実が嗅覚に妙な説得力を与えたのかもしれない。幼い頃田舎の道を登下校していた者ならば、風に運ばれてくる肥溜めの何とも酸っぱい悪臭から、匂いが風にのる様は同意を得られるはずだ。しかし、大都会の生温い空気というのは私の鼻に留まることなく、“そこはかとなく”臭覚を抜けていく。駒沢大学駅、地下にある駅から年々軽くなっていく身体を、大学の広告が大きく貼り出された階段から持ち上げる度に、その感覚は薄れ忘れていくはずであった。その嗅覚を呼び覚ましたのは、あの人と再会したその瞬間である。
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