第45話 最高権力者

「ふーん。おじさん、偉い人なんだあ」


「たぶん一番偉いはずなんじゃが」


偉いと聞けばもうジジイからおじさんに即格上げよ。


「いいわよ。とりあえず何処に連れてってくれるの?」


すたすた近づき腕を組んで寄せ・・・あ、ナインペタンヌだったわ・・・まぁ抱え込む。


「えっ?いや、まず礼をじゃな。窮地をお助け頂き幸甚に思うぞ」


「なんか偉い人のお礼ぽくないくわね・・・んんっ、私如きに勿体ないお言葉、恐縮の至り。聖下のお心深甚に思います・・・全てはエルテ神のお導きですわ」


コイツ法王とか言ってたしせーかでいんだっけ?・・・あー、アリーが言ってるせいげってコレか。


え?宗教指導者の頂点が最高権力者なの?狂人が??


「え?なんじゃ、儂のコト知っとるの??」


「いや、自分で法王とか言ってたじゃん」


「そうか・・・え?でもじゃあ知ってたんならなんで初めはしょっぱい対応じゃったのじゃ」


「えー?だって法王て只の宗教の偉い人じゃん。カネも渡さずに只で股開けとか言ってくる・・・んんっ、最高権力者だなんて思わないわよ」



爺はガックリとうなだれた。


「そうか・・・俗世ではその程度だったのじゃな」


あ、そーだ。


「いやいや、あたしブレイバーだからね?コッチの常識は知らないからさ、とりあえずあたし温かくて屋根があっておいしいモノ食べられるとこに行きたい」


ここマジで屋根が最低条件だからな・・・


「ああ、ブレイバーか・・・するとお主、教会には思う所もあるのではないか?」


「え?コッチの教会は・・・って、歩きながらお話しましょ?」


とりあえずエレベータ的な移動装置?んとこに絡ませた腕を引きひき、歩き出す。


ブレともブレイバーの友達はやっぱお金取りすぎじゃん!て不満あるみたいだけど、そんなん何処もそうだしどーでもよくない?」


「カネか・・・神はカネを受け取らんからな。貯まる一方なんじゃよ」


「へー、なんかおじさまがすっごく魅力的に見えてきましたわ!」


「ほほ、やはり若者でもカネが好きか。よいのよいのぉ」


稼ぐアテや当面の貯蓄は出来たんだけど、やっぱタカれる男はキープしときたい。


「それにあたしがレベラップ儀式やるようになったら、教会以上に搾り取る予定だしねwww」


クックック、そうか、神はカネを受け取らない・・・すんごくイイコトバを憶えてしまった!


「なんと!その方、階梯開放の儀を行えると申すか」


「うん。おじさまにもシてあげよっか?」


「ワシは教会で既に行っておるからのう・・・」


「いあいあ、なんか教会て呪い混ぜてんだってよ?とりあえず、アタマ降ろして」


「呪い?かような誹謗がまかり通っとるとは・・・これでよいか?」


なんだかんだ言いながら首を垂れるおじ。


なんか縦に長い帽子を持ち上げ・・・重っ!このじじい、こんなんのせてんのか・・・流石男、というところではある。


白髪頭に右手を乗せ、のたまう。


「大天使アイネルが使徒、ナイコが申し渡す。女神エルテの信仰、その奥義の書に啓きを得て新たなる目覚めと共に己が全てを開放せよ!」


どーよwwいろいろ繋げてゲームっぽくしたこの新呪文は!



コキーン、となんかの鐘のような音が響き渡り、暗くて臭いダンジョンが光の洪水と共に輝くような白さで埋め尽くされてゆく。


えー!なにこの演出!


その光の中心でガクガクと頭上に弾け続けるる天使の輪の下で痙攣してるジジイは金色の光に溶けてゆき・・・



全てが納まると、ジジイだったモノは「美女か?!」と目を見張ってしまう程の白く背の高い美青年・・・いや、ティーンか?うーん、わからん・・・という物体に変化していた。



「はぁ~・・・なにやらスッキリと、アタマや体の痛みやらが消えたわい」


え、それだけかよ・・・


つーか「え?美少女だったの?!」てくらい高く澄んだ・・・あたしよか全然・・・美声に嫉妬心がムラムラしてしまう。


男なのに!!


・・・いや、男だよな?

ステータスオープンッ!


バルタリアン 教皇

78歳男性


レベル 256


STR 306

INT 317

WIZ 521

MND 4096

PIE 4096



こやつも人外であったか・・・



つーか信仰高すぎでは?

インチキレベラップ集金教会の会長のクセに・・・なんで4096もあんのよ。


「あーあ、なんかソンした気分・・・」


「なんか声がヘンじゃの・・・ん?ヒゲが無い・・・なんかカオがツルツルしておる」


「風よカガミだして~・・・ハイ、どーぞ」


風鏡をじいに向ける。


「ん?美少女?なぜ法王の衣を着ておるのじゃ・・・ん?ワシと同じ動き・・え?ワシなのコレ?!」


「若返ったんじゃないの。別に若返りのまほーとかつかってないのに変よあんた」


じいがあたしを向く。


「お主、一体・・・ん?なんかそれ程の・・・いや、愛嬌のあるカオじゃなはっはっは」


じいの鼻をつまみ、撚る。


「いたたたた!!!!!」


「女のカオをアレコレ言わないの!」


「わかった!すまんかった!!」


開放する。


「ねえ、おじいちゃんて今めたくそ強くなったのになんであたしのこと叩き殺さずハナつままれたまま痛がってたのよ」


なんかもー女が通じなそうな感じに腹立っておじい呼びですわ。


「んん?つよい?ワシが??」


「なんかレベル256て出てるよ」


「256!・・・はっはっは、ワシのレベルは58とかじゃよ。お主は知らぬかもしれんが、レベルは60が最高なのじゃ」


「ふーんそーなんだ。なんかもぉ一緒に居ても楽しくないからあたし先帰るね」


「え?なんじゃ突然そんな連れないこと―――――」


じいの手を振り切りエレベーターまで駆けてその場を去った。


男なのに女系の美しさとか反則すぎじゃん!横に立ってたらあたし最高にみじめじゃん!!とムカムカイライラしながらダンジョンを出ると、なんか神殿の方から来ました的な装いの騎士っぽい奴ら目が殺気立って駆け回っている。


まだ誰もレベラップさせてないのにもう攻めてきたの?


「おい!女、迷宮内で法・・・白い老人を見かけなかったか?!」


「え、81階あたりでデビルと戦ってましたよ」


「そんな下に?!確かなのか?!?!」


「えっと、うーん、確かと言われたら確かなんですけどー・・・証明とかできないですよ?」


めんどくさいし。


「詳しいハナシを聞かせてくれ」


あたしの両脇に騎士っぽい鎧の人が立ち、連行が決定されてしまった・・・とほほ~~・・・




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る