第27話 遼遠なる冒険者登録・完結その予定

メモリーしたお姉さまの笑顔を反芻しながら大通りを歩く。


絶命の窮地に際し恐怖に震えた時、このお姉さまの笑顔があたしの足を止める勇気になるのよ!




・・・・・ダメだ、心に浮かぶお姉さまの笑顔に謝りながら逃げ出す自分の姿がありありと浮んでしまう。



「ぼーけんしゃかぁ~~~」


なーんで男でもないのにそんな野蛮なシゴトに就かなきゃなんないのよ・・・あーヤダヤダ!!!!!!


・・・でもお姉さまの笑顔と真心の接客が、あたしの脚をひたすらに冒険者ギルド・・・なんかテレビドラマに出てくるアメリカの警察署みたいなとこ・・・へと向かわせてゆく。



「そーいやアメリカてPOLICEて書いてある戦車があんだよな・・・」


広報誌でソレだからPOLICEて書いてあるミサイルとかもあるんじゃないの?

ひょっとしてアメリカて異世界よりヤバくね??

アメリカ人転生させてよ・・・


あ、キリスト教が国教だから転生はダメなのか・・・え?あたしキリ〇ト教じゃなかったっけ??



いつの間にかギルド建屋に入り、カウンターへ向かう。


「こんちわー」


この向こうにやる気なく座っているであろう受付の嬢に・・・


「冒険者ギルドへようこそ!パドヴァ城塞宮上街受付担当のリーゼイです。冒険者登録はお済ですか?」


「あっ、いえ、そのっ・・・」


えっ、あのゾンビみたいな女はドコ行ったの?

・・・て同じそばかす顔の金髪青目女じゃん!どうしたの?!


「あら?あなたって先日いらしたよね?なんか服装も見違えたように良くなってるし、お金の当てが出来たの?」


「あっ、お金は全然ないんだけど」


うーん、金無いて苦しいわマジで!


「ブレイバーなら無料でとーろく出来るってきいたの」


「ああ、改めましてようこそパドヴァ城塞宮上街支部へ!ブレイバー様には専門の担当が付きますのでこのカウンター、あなた様より左手奥の男性職員がお相手を仕ります。どうぞあちらへおいでくださいますよう」


そう言うとマリーちゃんはにこやかな笑顔()で首を傾げ、膝を折る。


・・・すごい・・・なんか女としての生命の輝きではちきれんばかりって感じのオーラが吹き出してる・・・


圧倒されつつカウンター沿いに左手方向へとフラフラと歩いた。


つーか男性職員て・・・あ、目の前の太った巨漢しかいないわ。

カウンターに丸太のような肘を付き、ぶっとい毛虫みたいなユビで頬の肉をぶちゅっと潰すように頬杖を付き吹きさらしの外、大通りを行き交う人々を眺めているぽい。


「あの、冒険者登録をお願いします。ブレイバーです」


「ん?」


巨漢がきょろきょろとあたしのはるか上に視線を彷徨わせている。


「下です」


「・・・ああ、ごめん。大人っぽい声だったから・・・って、ボク等ブレイバーは大抵大人だったね」


えっ


「あなたも?」


「うん。享年28でこの世界に転生してね。いまは合わせて63歳さ」


へー、すごいな。

こんな世界で35年も生きてんのか・・・しかもそんなぶっくりと・・・


「あっ、苧伴乃子です。享年56・・・だったかな、転生だけどまだ来て数日てとこです」


「えっ、転移組かい?でも人種が・・・」


「あ、なんか天使からどっかの御家庭に転生はさせられないって言われてゲームみたいなので作らされたんですよ、キャラクターを」


「はは、それはうらやましいね!いや、そんなケースは初めて聞いたな」


「うふふ・・・」


あれ、名前は教えてくれないのかー。

まーおばちゃん相手にゃそーだよね・・・ってとーろくだよ登録。


「あ。冒険者登録?てゆうのお願いします」


やっぱ同郷のヒトに使おうとすると虚構語彙が殊更に恥ずかしく感じる。


「ほいきた」


即答の対応に安心する。



ふとっちょ・・・うーん、なんて呼べばいいんだ。

ファットマン?


まあいいや、男性職員がカウンターの下から謎の機械?を取り出す。

カード決済する機械をおっきくしたみたいな・・・


「ここの平らなとこに手を置いて」


「はーい」


ぴたっ、とすいつくようになめらかな天板に手を乗せる。

磨かれた石のように固く冷たい感触。


すると、下のカードリーダー的な差込口からぺいっ、と黒い板が出てきた。


「そのカードがキミの・・・え?黒い??」


「あっ、どうぞ」


職員さんに渡す。


「カードランクは・・・ジェット?」


「あー、木の化石のやつですかね」


二番目のダンナがくれたプレゼントのなかにダッ・・・地味な髪留めがあった気がする。バッテンみたいなデザインの・・・


「へえ、聞いたことなかった。高級品なのかい?」


「うーん、宝飾店でそれなりのお値段・・・らしいけど、まー石炭みたいなものじゃないですかね」


そーいや若い子に人気とか言って渡された気がするし、そんなするもんでもないんだろな。


「ああ・・・じゃあ銅相当程度なのかな」


え?


「銅てぼーけん者的にどれくらいのランク・・・なんですか?」


「うん、中級冒険者だね。この街ならけっこう大きな顔で歩けるよ」


ひー!やめてほしい!!


「・・・あっ、あの、ほんとなんにもわかんないんで一番下がいいんですけど」


「ん?ああ、心配しなくても冒険者ランクは最下級のストーンクラスからだから安心して」


ふくよかな顔がニッコリとほほ笑む。

あー安心する顔だ・・・・・よかった。


「えーと、ないこ・おばんさん、クラスは魔法剣士、レベルが・・・ゼロ?」


はぁー、レベルとかあるんだ・・・いやだなあ・・・


「レベルは教会に行けば上がるから。ここにくるまでにモンスターなんか倒してる?」


「いえ、とくには・・・あ、豚人間みたいの倒した気が」


「オークかな。だったら一気に2レベルくらいは上がると思うから行っといたほうがいい。ここを出て左手に進んで・・・」



懇切丁寧な説明を聞きながす。





教会行ったら殺されそうだし・・・百日後人類が消えてから行こう・・・





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