結局は“0”に戻る

@SSK_smng

プロローグ ある夜

 その日の夜、彼は山から麓町を見ていた。そんな彼は腕を組んでいたが、その右腕はこころなしか震えているように見えた。彼は“奴ら”を心底憎んでいた。彼にとって“奴ら”は自分の人生を狂わせた挙げ句、“大切なモノ”を失う要因となった、ある意味で“略奪者”なのだ。その“略奪者どもに“又、彼にとって“復讐”とは、彼はここ数年、彼らにどのように苦しみを与え、彼らの罪を悔い改めさせようか考えてきた。そして、ついに計画が出来上がったのだ。それもあとはこの計画の“仕上げ”と、運と、そこは運命に任せよう。その気になれば、いつでもやめられる。だが、そう思いながら後ろを振り向いた。そこには山荘があった。ここで復讐を彼は行うつもりらしい。もちろん彼にもこの計画がおかしい事は、充分に理解していた。

(この計画が実現するのは、ある方向から見れば神技としか思えない。それどころか、仮に成功したとしても彼らに下した“天罰”が公に出れば“法律”によって裁かれるだろう…)そう彼は考えていた。だが、殺意はもう沸点に達していた。彼は夜景を眺めていた。夜景は暗く、沈んでいるようで、彼に何事かを語りかけているようだった。…と。…だが彼にも良心はある。彼は今、良心と復讐心で葛藤が起こっていたところなのだ。その決着をこの美しく、時に厳しい生命の母、自然に着けてもらうためにきた。数分間悩んだ末、と決め、きたるべき日を待つ事にした。

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