新しい条件

 シーナはジョーンに一緒に俺の剣の修行を受けてみないかと提案するが、ちょっと待て、俺の意見も聞かずに勝手に話を進めないで欲しいな。そう思った俺はシーナに一言言った。


「ちょっと待てシーナ、俺の意見も聞かずに勝手に話を進めないでくれ」

「あ、すいません、でも師匠、負けた条件とはいえ、この人は私達の道場作りを手伝ってくれるんですし、剣の修行を受けさせてもいいと思うのですが」

「シーナ、シーナはドラゴン退治を手伝ってくれたし、そのお礼の意味もあって剣の稽古をつけているが、こいつはな……」


 ジョーンの境遇には同情する。こいつの槍以外の武器の腕前の低さや短気をおこして暴力を振ったことが原因で追放はされたが、同僚も性悪な部分が相当あったようだしな。


 だがそこで俺の事まで利用しようとしてこちらの都合をお構いなしで決闘を仕掛けてきた、自分が負けた条件に道場作りを手伝ってくれるのは正直助かるが、それは俺の意図した事でもないし、こいつの善意というわけでもないしな。


「とにかく、事情があったとはいえ、同僚に仕返しとかならともかく本来関係ない俺まで巻き込んだし、それではい教えますというのは抵抗があるな」

「そうですか、すいません師匠がこの人に迷惑をかけられたのにちょっとかわいそうだと思ったからって勝手な提案をしてしまって」

「シーナ、でもなシーナの提案を聞くとシーナの優しい気持ちも無下にはしたくない。だからちょっと追加で条件を出そうと思う」

「追加で条件?」


 追加で条件と言う俺の発言に疑問を抱いたシーナをよそに俺は今度はジョーンに声をかける。


「ジョーン、お前の境遇には同情するがお前は俺達に迷惑をかけたんだ。その事は分かるな」

「ああ、分かっているよ、負けた条件だがしっかりとお詫びとしてもあんたの道場作りを手伝うよ」

「それで剣そのものには興味があるか?」

「興味?」

「師匠⁉」


 俺はまずジョーンに剣に興味があるかどうかを尋ねてその返答を受ける。


「ま、まあ槍が一番好きだが、剣も扱えたらなあとは思っている、でもダメなんだろう?」

「本当ならあんまり受けさせたくない、だから条件がある」

「条件?」

「もちろんジョーンにも道場作りを手伝ってもらうが、その合間に俺達は剣の稽古や魔物狩りの仕事をしている。魔物狩りでの成果次第では剣の稽古を受けさせてやるぞ」

「つまり、あんたらの魔物狩りの仕事を手伝えって事か?」

「そういう事だ、そこでの働きで判断させてもらう。もちろん槍の修理をしてからな」

「……分かった、その仕事手伝わせてくれ!」


 とりあえず魔物狩りは手伝ってくれるか、まずはこいつの本気度を見極めないとな。

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