第5話 キレ易くなったカンガルー

 おや?自宅聖域の外が何やら騒がしいな。こんなこと、ここに来て初めてだ。


 俺は家の窓からソっと外を覗いた。



 あ!!人だ!人が何人もいる!!!


 え?ええ??どうして皆様は俺の自宅聖域に来たんですか?


 スキルを使ってテレパシーを送ってみたが、返答は無かった。ただ、俺からのテレパシーは相手に届いた様で『何だ?!何かが頭に直接語り掛けて来た!“テメエら何処の組のもんじゃ!”って!聞こえた!!』と大騒ぎしている。


 大層厳つい鎧を着てるクセに、肝の小さき男子よの〜。


 しかし、これは異世界に来て初めてとなる、現地人とのコンタクト。そう。スキルで出して失敗してから初の人類達だ。だからだろう、ヒゲモジャのオヤジも何だか愛らしく見える不思議フィルターが俺の目を曇らせた。


 先ずは挨拶からだね。身だしなみ(毛づくろい)はいつもしてるけど、ここはスキルを使って、以前の俺の姿で見える様にちょいと細工をしておこう。さあ、俺のお披露目だよ!



「はじめまして、こんにちは。異世界の皆様。私、鯨井は……」



 カンカンカンッ!!と、自宅聖域に張った防御(物理攻撃)が反応した。今日もスキルで築いておいた結界が良い仕事をしてくれた様だ。そして俺の正面には、放たれた鋭い矢が数本敢え無く落下していた。



「………これはまた、とんだご挨拶を……してくれてんじゃねぇよっ!!こっちが下出に出てやったのに行き成り攻撃するとは、舐めてんのかクズ共が!!死に腐れカス!!」


「「「「「「ギャァーーー!!!」」」」」」



 俺、カンガルーだから単細胞?なんだよ。


 どうしたんだろう……前はこんなにキレ散らかしたりしなあったのになぁ………。

 あ!そうか!!俺、今15歳に若返ってたんだ!盗んだバイクで走り出してもおかしくない年齢じゃないか!



 俺の曇った眼は、一瞬にして晴れ渡った。


 そう、俺は15歳のカンガルー。


 誰にも縛られる(物理)ものか!!


 さらば異世界人達よ!次があるなら、最低限の礼儀を学んでからにしたまえ!






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