第4話 涙に暮れるカンガルー

「ふっ!ふっ!……この!!どうだぁ!!」



 今俺は、スキルで出したシャドーを相手にカンガルーボクシングをしている。

 頼りがちな足と尻尾を使わず、腕を磨いているって訳さ。……いや、下半身を支えるのに尻尾はちょこっとだけ使ってるよ?


 異世界?では、自宅警備員であろうと、己が自宅聖域を守る為に日々精進が欠かせないからな!


 幸いにして、今は外敵からの接触は一切無い。寧ろ『……ここ何処よ?』レベルに深い森の中に自宅聖域があるため、このまま誰とも会わないんじゃ……との懸念が隠せなくなって来た。


 べ、別に誰かに会いたいとは言ってないからな?!

 ただ、自宅聖域の外は、どうなってるのかなぁ〜?って、少し、ほんのすこーーしだけ気になっただけ!怖いから決して外には出ないけど!



「ふぅ〜〜〜〜。いい汗かいた!」



 やはり、邪念を振り払うのに運動は最適だ!


 これで美味しくビールが飲めるってもんよ!


 

「あ゛あ゛あ゛ーーー!!!染みる!!五臓六腑と尻尾に染み渡るぅー!」



 なんで運動した後のビールって美味いんでしょうね?もうこれはビールを美味しく飲むために運動をしていると言っても過言では無いね!



「あん肝、美味〜〜〜!!」



 紅葉おろしをちょいと乗せて………はぁ美味しい!ビールは脂を流してくれる素晴らしい飲み物だなぁ。


 俺、カンガルーだけどさ、草食ちゃうねん。雑食やねん。ビールがめっちゃ好きやねん。


 それに、女の子(ヒト科)は裏切るけど、ビールは裏切らないからさ………。


 俺ね、カンガルーだけどワンチャン、イケるんじゃね?と思ってスキルで女の子を出してみたのよ。


 一緒に楽しく暮らして、おしゃべり出来たら良いな〜的な気持ちでな。だってカンガルーボディでは、性欲もクソもねぇんだわコレが。


 そしたらさ、俺のスキルで出て来た女の子なのに、俺の姿を見た途端、罵詈雑言と悲鳴と物理攻撃(物を投げる)をキメて出て行ってしまったのだよ。


 一切の会話も歩み寄りも無く、消え去る後ろ姿を目にしたら、流石のカンガルーもハートが粉々にブレイクして涙がノンストップで溢れた。


 オレっち、悲しみとロンリネスがアイキャンストップだよ。


 だから俺は決めた……今世を自宅警備員として全うすると!


 そして今、心新たに誓おう!


 もしここに女の子が来たとしても、家には入れないし、信じないって!

 絶対絶対信じない!どんなに可愛いコが来てもそれは変わらないぞ!フリじゃないからな!




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