第2話
足が完全に疲労から回復する頃には、街の近くについた。
口論の声がよりはっきりと聞こえる。
一人は冒険者らしい鎧を来た人間の兵士、もうひとりは髪の毛が爆発した受付のエルフだ。
周りで列にならんでいる商人や冒険者らは、それを無視して他の受付に対応をしてもらっていた。
だがそっちも初心者なのか、全然遅くて後ろの人達も呆れているようだ。
私は前に行き、まずは口論する方に向かった。
「なんで入れないんだよ!」
「この街の規則ですので、残念ですが入れません。」
「規則規則規則!その規則がなんだって聞いてるんだよ!」
「それはあなたの体についてるものが」
「俺の体にはなんにもついてねぇって何度も言ってんだろ!」
「ですが機械が反応したので!んん……見せてください。」
「ないって!」「ありますでしょ?」「ない!」「ありますって!」
かなり時間が経ってふたりとも苛立っているのか、かなり声が枯れていた。
その中に入るのが少し億劫だが、他の人が怯えて私しか入れそうなものはいないし、入るしかないのか。と覚悟を決めて私は話しかけた。
「あのー!どうしましたか!」
「ああ?!お前聞いてくれよ!こいつ、俺の体にずっと呪いみたいなもんが付いてるっていうんだ!見た目には何もついてないだろ?」
「呪い?」
「機械は反応したんです!男の体全体になにかがまとわりついてるっていう警告が!」
「なにかついてる……」
私はその、ついてる、という言葉から何個か想像をした。
どこかの幽霊とか、気づかないほど薄い呪いか、それともただの機械の間違い。
鑑定をすれば簡単に解明できるのに、なぜここでずっと止まってるのだろう。
「あの、鑑定とかって持ってないんですか?」
「あ……そうなんです。二人とも鑑定を持ってないので、今鑑定できる人を呼んでいるんですが、なんか遅いんですよねぇ……逃げられましたかね……はぁ。」
「そうなんだよ!お前、鑑定使えないか?」
鑑定は余裕でできるが、口調が気に食わない。
だが冒険者じゃあこれが当たり前だ。我慢をしないと。
「ま、まぁできますけど」
「そうなんですか!?今すぐこいつ鑑定しちゃってください!」
「こいつ?!……せめてこの人だろうがっ!言い方を」
「あなたもさっきお前と2回も言いましたけどね……おっと、つい口が」
「……チ」
冒険者の男は一瞬だんまりしたものの、舌打ちをして受付の男を睨んだ後、私の方を向いた。
そして、おもむろに手の裏を見せてきた。私が気に食わないようだ。
「ほら、早く鑑定しろ。」
「やっぱ、しないでおきますかね。」
「て、てめぇ……」
「嘘ですよ!だからすぐ剣抜かないでください!」
彼の怒りの火に油を注いでしまって、慌てて抜いた剣を収めさせた。
私は鑑定を始めた。杖を出せないので簡単なものにはなるが。
その人は腕を差し出してきたので、そこに魔力を流して、しばらくして血管を巡ってきたものを回収する。
「……少し時間がかかりますが、どうかお待ちを」
「……」
冒険者の男はイラついているのが抑えきれずに貧乏ゆすりせずにはいられないようだ。
どれだけの時間待っていたのかはしらないが、イライラしていると鑑定が遅れるので止めてほしい、と言えるはずもなく気まずいまま体を回ってきた魔力を回収して鑑定し終わった。
結果は、飢餓の呪いの膜がお腹にぐるりと付いていたようだった。
「……ほんとにうっすらとお腹に呪いが付いてますね、小癪な……ですがただの飢餓の呪いで、未知のものでもありませんし、教会とかに行ったら治ると思います。」
「な……」
冒険者の男は信じられないというように目を見開いて、悔しそうに歯を食い縛った。
「そうなんですか、それなら協会までにお腹がなっちゃうんじゃないですか……ね」
ともう一方のエルフがにやけながら表面上では冒険者を心配していた。
私は首を横に振る。
「いえ、今はそんなに強いものでもないですし、入ってすぐに教会で洗礼を受ければ恥をかかなくてもすみます。」
「ほっ……だとよエロフ」
「煩いですよ、泥臭探検者さん」
「なにを」「このっ!」
「まあまあ!」
冒険者の男はエルフを横目で見ては、ニヤリと馬鹿にしていた。
エルフもそれに対抗して横目で見合うと、フッと笑いながら愚か者をみる目でバカににしていた。
間に入り喧嘩を止めたが、その後もお互いの間に火花が飛び散っているのが見えた。
仲いいのかな?
私はその後、そのエルフとは他の人に通してもらった。
ちょっと前に慌てた様子の魔術師がやってきたが、もう終わった出来事で用済みだと聞き、逃げるエルフを追いかけながらキレていた。
それがドタバタ劇のように思えてきて、私は笑いが込み上げてきた。
水の魔女の旅日記 グレまきっ! @grmknanodesu
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