水の魔女の旅日記
グレまきっ!
第1話
ある花が咲いている丘の上に、美人がいた。
その名前は「アクアライン・スーリウス」
別名「水の魔女」
魔法使いと認められたことを証明する、膝まである大きな紫のローブを着て、そのローブは高級な
その下には露出多めで最低限の紫の鎧を着ている。これは、あるダンジョンで着てしまったときに束縛の呪いに気づかず脱げなくなったもの。なので、別にそういう趣味とかではないのだ。
むしろ早く脱ぎたい。こんな恥ずかしくてダサい服剥いでしまいたい。
一応この服からも上が着られるのだが、そうするとローブを着てしまうと暑くなるのだ。
呪いがあるのはよく見ればわかったことなのだが、まだその時は見習いだったので呪いとか何もわからず、よく見ることもなく着てしまったのだ。
今でもその服を見ると、輝かしい初心者の頃を思い出して初心に戻る。
そして初心者時代の黒歴史を思い出すと、恥ずかしくなりつい頭を叩いてしまう。
ああやめてくれ!杖を折っちゃってごまかすために無詠唱魔法ができると意気込んでいたあの頃を思い出させるな!
手には身長と同じサイズの魔法の杖を突いている。先に付いてるのは、手のひらサイズの正三面体の大きな宝石「魔法石」という特別な石である。魔法を打つときにここに魔力を注ぎ、そしてイメージをすると魔法が具現化される仕組みだが、扱いをミスすると壊れてしまう。
そしてその色は、水色。
私の得意な魔法「水魔法」と同じ色だ。太陽にかざすと海のように模様が揺らいていた。
その宝石を見るだけで、誰もが一目で私のことを水の魔女とわかるものでもあるので、町中など人が大勢いるところでは流石に隠している。大騒ぎになられたら物取られたり大変なんで。
そしてここは、様々な花が水平線まで海のように大きく広がる「
「よし、ここで45箇所目!」
といい、持っていた紙にある「行きたい所100選!」の「
その後一番きれいな谷の間に来られた私は、目を輝かせながらその花畑を、少しなだらかな丘の上から見ていた。
谷一面に虹のような花が咲き誇り、それを太陽が照らしてとても華やかになり、それが一番映えるのがここなのだ。ただし谷の間なため、子どもなら飛ばされそうなほど風が強いことが欠点だ。
「綺麗ー!」
帽子が飛ばされそうな風の中抑えながら、私は近くの花に触れ、匂いを嗅ぐと蜜の香りが漂ってくる。
甘い香りの中にいい青臭さがあって私にとっては好きな匂いである。
しかもこの花に
「は、くしゅ!」
のはずだが、花粉によりくしゃみは出る。
バラやポピーなどのとても有名な花から名前も知らない不思議な花までたくさんの種類の花が幻想的で、とても壮大で吸い込まれそうだ。
薄く漂う花のいい匂いを、鼻だけでなく胸を膨らませ体全体で感じ取ると、心が安らいで何もかもどうでも良くなってくるよう。
左を向くと、遠くに町の一角が見えている。
近くに街があるかと心配だったが、大丈夫なようだ。
それに気づいた私は、今日はあそこの町に止まろうかな?どんな宿があるのだろう?などと考えて期待を膨らませていった。
ワクワクした気持ちを心のなかに収めきれず、ついスキップして体が弾んでしまう。
だが丘の麓から駆け上がっている状態なので、足がだんだん重たくなり、やがて膝を抱えながら歩くようになってしまった。
「はぁ……はぁ……ひぃ!疲れたぁ!」
杖を支えにしながら棒になった足をなんとか動かし、私は丘のてっぺんまでたどり着いた。
そこで町の全貌が見えたので見渡すと、混んでいる街の入口で口論をしている二人の男が見えた。
おそらく、一人は警備員でもう一人は旅人か冒険者のどちらかであろう。入国審査で引っかかりでもしたか?
後ろも並んでいるが、どうやら誰も止めに入る気はなさそうだ。
水の魔法を使って集音をしようともしたが、行ったほうが早いだろうと魔法の濡れない波を出す〈サーフィン〉を使い、その波に乗って1直線で向かっていった。
花にも草にも何も影響を与えず、私の体だけを軽々と持っていってくれるその波はとても便利だな。と改めて思った。
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