電話と偶然
天川裕司
電話と偶然
タイトル:電話と偶然
女「アハハwなにそれ〜」
彼「ヘヘwロシアンルーレットの悲劇ってんだw」
今日もカップルが公園で笑い合い、
男は冗談を言い女を笑わせ、
女はそれに応えて男に好意を寄せていた。
このカップルは付き合ってまだ数ヶ月。
これから新しい将来を夢見て
幸せに歩んで行くはずだった。
しかしそれからわずか数日後、
この2人を悲劇が襲ったのだ。
彼「…あいつ、また誰かと喋ってんな…」
女が男に隠れて
しばしば電話をするようになっていた。
少なくともその男からはそう見えていた。
この女はどちらかと言うと派手な性格で、
見方によれば明るく活発であり、
一緒に居て楽しくなるような好人物。
だが親しく付き合ってゆくと
その明るさや派手さが軽く見えるようになり、
それで落ち着かないのが
恋愛を破綻に導くようになる。
つまり男はこの時、女の浮気を気にしていたのだ。
女「アハハwそうなのぉ?うんわかった♪じゃぁあとでね」
男「今、誰と喋ってたんだよ」
この日はデートの日でなく、
女は1人公園に来ていた。
そこでたまたま鉢合わせしたこの男。
彼氏でありながらその雰囲気を見て遠ざかり、
物陰から彼女の様子を伺っていた。
その物陰は彼女から近く、
しゃべってる内容、
その空気までしっかり見て取れていた。
女「うわ!びっくりしたあwえ、なに??」
男「…今、誰かと喋ってたろ?それ誰なんだよ」
女「えぇ??w」
女はまだ気にしていない。
男がどれほど浮気を気にして、
そのとき攻撃的であったかと言うことを。
心の中が見えないのが壁になる。
女「だあからパパだって言ってんでしょ、なに勘違いしてんのぉ?」
男「……」
こんな事が数度、続いた。
男のやり切れないボルテージが段々上がる。
女は自分の生活にやはり邁進してゆく。
ここに崩せない現実の壁が出来てしまった。
そして事件は起きたのだ。
(彼女のアパート)
女「えぇ〜〜そうなのぉ?そりゃ大変ね〜♪」
彼女は今、簡易アパートに住んでいる。
台所側の窓を少し開けており、
部屋の空気を換えようと風通しを良くしていた。
時は夕方から黄昏時。もう夜が来る時間帯。
男はどうしても気になり日常の事が手につかず、
彼女のアパート前まで来ていた。
そして気取られないようにゆっくり階段を上り、
彼女の話し声がうっすら聞こえる
その部屋の前まで歩いて、
ちょうど窓が開いていたから
そこからまた気取られず、
覗くようにして部屋の中を見渡す。
彼女は奥のリビングで電話している。
窓が開いていたことから
その彼女の様子もはっきり見て取れた。
嬉々として笑いながら、
電話口で話し続けている彼女。
その屈託ない笑顔がこの時ばかりは
男の心に鋭く刺さる。
電話向こうの相手と彼女にしかわからない、
何やらゴチャゴチャした事を
ずっとしゃべり続けており、
あいだあいだで聞こえる彼女の笑い声が
また男の心を微妙に大きく揺さぶる。
そしてその会話の中に聞こえた
「明日待ってるわ♪」の彼女の一言が、
男の心をそのとき決定づけてしまった。
男「やっぱりコイツ…!!」
このとき彼女にとって最大の悲劇だったのは、
さっき買い物に行こうとして鍵を開けたドアが
そのままになってしまっていたこと。
ちょうどその時に電話がかかり、
彼女は急いでリビングへ戻り受話器を取ったのだ。
男は開いていたドアからこれ幸いと中へ入り、
電話中の彼女に姿を見せた。
電話中の彼女は受話器を耳から離し、
目をまん丸くしていきなり現れた彼の姿を認め、
瞬間、何も言えない。
やり切れない顔をした男は無言のまま
いちどキッチンへ行き、料理中だった
まな板の上の包丁を手に取り、
改めて彼女に近づき襲ったのだ。
そして彼女はその場で。
(事件)
翌日の朝。
彼女が部屋で息絶えているのを父親が発見し、
事件になった。
彼女がその日、
朝のモーニングコールをあらかじめ
父親に頼んでいたようで、
幾ら電話しても娘が出ないのを
不思議に思った父親は彼女の部屋に来てみた。
するとその惨劇。
(取調室)
警察1「君がやった事は認めるんだな?」
男「は、はい…。…僕はなんてバカなことを…」
(取調室を出て)
警察2「分かりました。父親には今付き合ってる女性が居ます」
警察1「やっぱりか。証言が食い違ってたわけだ。前日に被害者がかけた電話番号の裏は取れてるな?」
警察2「ええ、相手は父親で間違いありません。時間帯も一致しています」
警察1「とりあえず話を聞く必要がある。で、所在は?」
警察2「女の家です」
警察1「行くぞ」
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=2ZhW78Cx7es
電話と偶然 天川裕司 @tenkawayuji
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