第30話 娘はなぜか、転校生に救われます!?
「……っい、痛!」
「?」
さっきまでこしょこしょ、悪口を言っていた女子たちの悲鳴が聞こえた。
凜は、何が起こったのかわからず振り向く。
三人の女子高生が、廊下の邪魔になって倒れていた。
お尻や、お腹、すねを摩りながら。
そして、倒れる三人の近くには格闘技のポーズで立っている、アナスタシヤ。
彼女は、「ふん」とかっこつけていた。
「てめぇら! 邪魔アル!」
「……っ噂の転校生!?」
三人は、全く状況が読みこめていない。
「デブが三人も並んでいると、邪魔アル! 分散するか、その脂肪をどうにかするアル!」
さして太っていないのに、デブと言われてしまう三人。
「それから、三人お揃いのパンツはいい友情アルが、その年になってくまちゃんパンツはどうにかした方がいいアル! 微塵もエロくなくて、それを見た彼氏ゲキ萎えアル!」
三人は頭から倒れていってしまったがために、パンツが見えてしまっていた。さらに、女子高生特有、スカートを折る技法によりパンチラ擦れ擦れのミニミニスカート。
くまちゃんパンツは、大衆に見られてしまった。
「「「 っ! 」」」
恥ずかしくなったのか、三人はパンツを隠しながら走って逃げて行った。
「はあ、清々したアル」
アナスタシヤがした行動は、ただそこらへんにいた生徒に暴力を振るっただけのように思えるが、凜からは違うふうに見えた。
「……もしかして、助けてくれたの?」
凜が、アナスタシヤに近寄って、言う。
するとアナスタシヤは、ムッとした。
「別に助けたわけじゃないアル! デブが三人も廊下に並んでいると、通行の邪魔になるのは当たり前アル! 粛清してやったに過ぎないアル!」
凜は、それでも良かった。
「――――ありがとう、助けてくれて」
「だから、助けたわけじゃないって言ってるアル!」
いつものように、「ッムキ――――ッ!」と言いながら、彼女はその場を立ち去って行った。
もしかして、アナスタシヤはそれほど悪い奴じゃない?
「いやいやいや……」
だったら、あんなあからさまに私に意地悪してこないだろう……そう思う、凜だった。
――――数日たって、休日になった。
いつも通りの微妙な関係。話をしようとすればするほど、関係が悪くなっていく。
朝から無言の朝食会を行い、時刻は十時頃。
「――――――」
「――――――」
無言に、無言。
聞こえてくるのは、お皿の音、コップの音。咀嚼音。互いに目を合わせることなく、下を向いて食事をする。
「……?」
通知音がして、スマホを見る凜。
ゆーか「今すぐ電話できる?」
ゆーか「今すぐだよ? 出るしかないよね!? 親友からの電話に、出ないわけないよね!?」
ゆーか「ねえ?」
ゆーか「既読ついてんだから、見てるよね」
凜はビクっとした。
優香からの『見てるよね』系メンヘラL〇NEは、恐ろしい。いつもの優香とは思えない。
それほどまでに、優香は焦っているということだろう。
凜は取り合えず、電話に出てみることにした。
「はい、もしもし―――――」
電話口。
破裂音みたく大きな声で。
『りぃぃぃぃぃぃぃんッ!!!』
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