今日も、娘はお義父さんにメロメロです!!
夏神 ジン
第1話 今日も、娘はお義父さんにメロメロです!
「――――そんなに一人が寂しいなら、おじさんのところに来るかい?」
そう少女に問いかけたのは、12月のクリスマス。
雪が降る日に、ぼろぼろのパジャマ姿で少女は出迎えた。まだ、小学生の女の子。
その子は、隣の部屋の住人だった。
同じマンションの一室。なのに異常なまでに狭く、臭い。
玄関はゴミまみれ、またそこから見える景色も……ひどかった。
「おじさん、わたしのこと、すてない?」
小さくてかわいいその生き物は、俺にそう言った。怖がっていたし、不安そうだった。
「ああ、もちろん」
しゃがんでその子と同じ目線になって、俺は笑った。
「毎日、美味しいご飯を作ってあげる」
俺が言えばその子はにこっと笑い、俺に抱き着いた。
「りん、おじさんのとこ、いくっ!」
この日、俺八雲龍之介の人生が180°変わった。
――10年後。
なんだろう。
なんだか、あたたかい何かを全身に感じる。首元を圧迫する、大きくて柔らかい二つの何か。その下は、弾力のある二つの何か。
そして、何より耳元の声は……。
「……う、りゅう……おきて?」
「ん?」
その声にハッとして起き上がった。
「凜!?」
俺は声を上げた。俺が起き上れば、その上に乗っかっていたものも、自然と起き上がる。
それは、起き上がると同時に俺に抱き着き離れない。
「……えへへ」
そう言って、乗っかっていたものは笑った。
正体は、娘の凜だった。
いつも通りのパジャマ姿で、いつも通りの起こし方。身体にくっついていた、柔らかいものや弾力のあるものについては……説明を省く。
それにしたって。
「凜! そう言う起こし方はやめろって言っているだろう! それに!」
言って、俺は凜を自分の体から離した。
「またノーブラッ!!」
仮にも、俺は男である。男である。男で……ある。
娘と言えど、これは反則だ。
俺が怒ろうと、凜は少しも詫びるつもりはないらしくただ、しゅん、とする。
「……だって、ブラきつくて苦しいんだもん」
ああ、またサイズが大きくなってしまったのだろうか……ここまで来ると、日本にはサイズがあんまりなくて困っちゃうんだけどな~っじゃなくて!
「あのな、俺は男なんだぞ……もしかして、他の男にも」
「し、してないよ! するわけないじゃん!」
じゃあ、どうして俺にはするんだよ。とツッコミをしそうになるが、これ以上事態を悪化させるわけにはいかない。
皆の者、どうしてここまで俺が怒っているか、わからないだろう。たかだか、娘だろうとそう言いたいのだろう。ならば、共感させてやろう。
我が娘は――――Jカップ。
もう一度言っておこう。我が娘、高校一年生の娘のバストは、Jカップ……!
それに加えて、顔がいい。ものすごい可愛い。これは決して、親バカではない。クラスではどうだか知らないが、近所では有名な美人だ。
髪も長く、スタイルも抜群。愛嬌もある。
完璧なまでに、うちの娘は可愛くてエロい。
今この瞬間困っている顔も、超絶可愛い自慢の娘である。父であろうと、乳に反応してしまうのは致し方ない。"ちち″だけに。
――ん?
「どうした、凜?」
凜はいささか焦っているように見える。
俺の心の中だけのおやじギャグが、テレパシーで聞こえてしまったのか?
「りゅう、時間やばい」
そう言われ、時計を見ると。
「え? そんなわけ……」
現在時刻、八時ぴったり。
「わああああああああッ! めちゃくちゃにやばいじゃないかッ!」
俺はベッドを飛び出して、急いで朝食をつくる。
目玉焼きを作り、卵焼きを作り、そしてご飯を盛り詰め――朝食とお弁当を同時進行で作っていく。
「凜、先にお前の分だけ作るから食べてろ! あ、先に顔洗ってこい!」
「う~ん」
と適当な返事をする凜。
凜はまだ眠そうに、目をこすっている。
俺は凜がゆっくり朝食を食べている隙に、食器を洗い、軽く掃除をする。
その後、身支度を終わらせた。
……よし、五分は余った。これで不測の事態にも対応できる。
とりあえず、椅子に座るか。
そう思い、俺は休憩を取った。
いつもだいたいこんな感じで、朝の時間はほとんど立ちっぱなしだ。家に帰ってからは、やはり動けない。朝のこの時間をいかに利用できるかに、俺と凜の生活がかかっている。
とはいえ、今日は良い。
寝坊したのに、五分も時間ができた。この時間に、洗濯物でも畳んでしまおうかと立ち上がった時。
ふと、後ろから引っ張られた。
「りゅう、ボタン……閉じられない」
潤んだ瞳で、凜は俺に訴えかける。制服のシャツのボタン。
「ッ!」
凜……ボタンが閉じられないのは、お前の胸が豊かすぎる所為だ……ッ!
ちょうど胸の中央部。
そこのボタンだけが閉じられずにいた。たかが、ボタン―――されど、ボタン。
それは、最難関。
誤れば、しっかりと「タッチ」してしまうことになる。娘は、高校生! 思春期だ!
男親に触られるのは、嫌だろう。
俺は頭の中でシミュレーションをする。がしかし、全く正解が見つからない。どのシミュレーションでも失敗に終わる。
どうする……どうする、八雲龍之介!
「りゅう! 時間……ない」
考えていれば、急かされる。
待てよ……ちょっ、待てよ。
いや、三十路のおっさんがこんなこと言ったって少しも格好よくはないんだが。
「……っりゅう!」
―――やるしかないッ。
「……凜、じっとしてろよ」
「うん……」
だから、なんでそういう空気に……ッ!
俺は真帳に手を伸ばし、振れないようにゆっくりボタンを穴に通す。
ンン……なかなか通らない。自然と手が震えていく。
まずい、触れてしまう。
駄目だ! 触れてはいけない! 触れれば最後……家族崩壊の危機!
ボタンに力を入れる。
「んっ……」
凜――――お願いだからそういう声は出さないでくれ。お父さんと言えど、まだ、まだ心は若いから。
俺は、ボタンに一極集中し、指先の感覚を強める。
入れ、入れ、入れ――――、その時。
ブツン。
「あっ」
凜が小さくつぶやいた。
ボタンが、力に負けてぶっ飛んだ。一つのボタンがぶっ飛べば、それに連なってすべてのボタンが空を舞う。
そして――――――。
俺は、何も見なかった。見なかったことにして、その美しい二つの果実をシャツで隠した。
「――――凜、ブラジャーじゃなくてもいいから、何か着なさい」
「うん」
ボタンの一つが、俺の頭に乗っかった。
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