【もしも】異世界の王女たちが、全員僕に呪われた運命を押し付けてきたら……??
よっちゃん
第1話「もしも異世界の王女たちが、全員僕に呪われた運命を押し付けてきたら……?」
高坂蓮(こうさかれん)はその日、何度も見たはずの光景が目の前で歪んでいくのを感じていた。
車のライトが近づいてくる。クラクションの音が耳をつんざき、鋭いブレーキ音が響く。その瞬間、何かに引っ張られるように視界が白く染まった。
「……ここは?」
目を覚ました蓮の目の前には、絵画のような幻想的な光景が広がっていた。草原の緑、澄んだ青空、そして目の前に立つ四人の女性。彼女たちは驚くほど美しく、蓮を見つめる瞳には不思議な輝きが宿っていた。
「あなたが、世界の鍵ですね。」
最初に口を開いたのは銀髪の王女だった。彼女の名はアイリーン・ルナシア。月の国の姫である彼女は冷たい微笑を浮かべ、蓮に一歩近づいた。
「私たちが待ち望んでいたのはあなたです。この世界の均衡を保つために、あなたが必要なのです。」
「え?ちょ、ちょっと待ってくれ!ここはどこなんだ?僕は、ただ……」
「説明は後にしますわ。」
別の王女が微笑みながら割り込む。金色の髪を揺らした彼女――セリア・オルフェウスは陽気に蓮の手を取った。
「ねぇ、あなたも分かるでしょ?ここに来たのは運命。私たちのために力を貸してくれるわよね?」
蓮はその手を振り払おうとするが、彼女の目に宿る執念のような光に圧倒されてしまう。他の二人の王女も口を開いた。彼女たちの言葉は一様に「呪い」「救い」「あなたしかいない」といった内容ばかりだった。
夜になると、蓮は月の国の宮殿に案内された。豪華な部屋に案内されたが、不安と疲労でベッドに横になることさえためらわれた。
「……寝られるわけがないだろ、こんなの。」
窓から差し込む月光を見上げた瞬間、彼は微かな囁き声を聞いた。
「ありがとう、来てくれて……。」
振り返ると、アイリーンが立っていた。白いドレスをまとい、まるで人形のように佇む彼女の姿は美しい――だが、その微笑みはどこか冷たさを感じさせた。
「高坂蓮、あなたが受け入れてくれたことで、私の呪いは一歩解けました。」
「……呪いって、一体何なんだ?」
蓮が問いかけると、アイリーンは静かに歩み寄り、その手を蓮の胸に触れた。
「これは、あなたに背負っていただく宿命。そして――愛です。」
その瞬間、蓮は全身に鋭い痛みを感じ、意識が遠のいていく。最後に見たのは、アイリーンの薄く笑う顔だった。
朝日が差し込む中、蓮は目を覚ました。額に冷や汗をかきながら、身体を起こす。腕に妙な違和感を覚え、袖をまくると、そこには黒く不気味な模様が刻まれていた。
「……なんだ、これ。」
誰かの足音が近づく。振り返ると、セリアがドアを開けて立っていた。
「おはよう、蓮。さぁ、次の国へ行きましょう。私たちには時間がないの。」
蓮は恐怖と混乱の中で立ち上がりながら、自分が巻き込まれた異常な状況を呪った。
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