命を繋ぐ瞬間

タミフル・カナ

序章 夢の扉を開いて

プロローグ 夢の扉を開いて

春の柔らかな陽射しが差し込む大学病院のエントランスは、祐介にとってまぶしすぎるほど輝いていた。

「集中治療室、か…。」

胸の内でそう呟きながら、彼は緊張に満ちた一歩を踏み出した。看護師1年目。憧れだったこの職業に就いたものの、配属されたのは命の最前線。ICUという厳しい現場だった。


祐介は手の中でクシャクシャに丸められた配属通知を握りしめていた。それを見た同期の大谷翔が隣で呆れたように笑う。

「お前、いつも熱血だな。その握り方、紙が泣いてるぞ。」

「うるさい。緊張してるんだよ!」

祐介は真っ赤になって返すが、その目は決して折れることのない意志を宿している。


エレベーターの扉が開き、ICUのフロアに到着する。そこは想像していた以上に緊迫感に包まれていた。廊下には患者を乗せたストレッチャーが次々と運び込まれ、医師や看護師たちが無数のモニターや機械に囲まれながら動き回る。


扉の向こうには、命と死が交差する世界が広がっているのだ。祐介は目を閉じ、一度深呼吸をした。胸が高鳴る。だが、それ以上に彼の中で燃え上がっているのは、「絶対に患者を救いたい」という情熱だった。


「よし、頑張るぞ!」

心の中でそう呟くと、祐介は意を決して扉を押し開けた。

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