第8話 他者の期待や評価とどう付き合うか

私たちは社会の中で生きている以上、他者からの期待や評価に触れながら日々を過ごしています。それは時に励みになり、自分を成長させてくれるものでもあります。しかし、パーソナリティ障害を抱えている人にとって、それが大きな負担やプレッシャーになることもあります。私自身も、他者の期待や評価にどう向き合うべきか、長い間悩んできました。


他者の期待と自分の葛藤


「もっと普通に振る舞ってほしい」「どうしてできないの?」

そんな言葉を聞くたびに、私は自分が不完全で、価値のない存在のように感じてしまうことがありました。特に、期待に応えられなかったときの罪悪感や、自分が周囲の失望を招いているのではないかという思いが、胸を締め付けました。


こうした感情は、回避性や境界性の特性とも深く結びついています。回避性パーソナリティ障害を持つ私は、他人からの批判を恐れるあまり、最初から期待を避けようとしたこともありました。また、境界性の特性がある人は、相手の期待に過剰に応えようとして自分をすり減らすことが多いと言われています。


期待と評価に振り回されないためのヒント


私がこれまでに学んだ「期待と評価」との付き合い方を、いくつかご紹介します。

1. 「できること」と「できないこと」を明確にする

他者の期待に応えたい気持ちはあっても、自分にできないことを無理にやろうとすると苦しくなります。私は「自分にできる範囲」をまず明確にすることを心がけるようにしました。そして、無理だと思うことは、勇気を持って断る練習をしています。

2. 「完璧でなくていい」を受け入れる

他人の評価を気にしすぎると、「完璧でなければならない」という思い込みに縛られることがあります。しかし、どんな人も完璧ではないし、失敗することは当然のことです。失敗しても大丈夫だと自分に言い聞かせることで、プレッシャーが少し軽くなりました。

3. 相手の期待に振り回されない

相手が期待することをすべて叶えようとすると、自分自身が消耗してしまいます。私は、「相手の期待は相手のもの」と考えるようにしています。相手がどう思うかをコントロールすることはできない、と割り切ることが大切だと気づきました。

4. 自分自身の評価軸を持つ

他人の評価に頼るのではなく、自分が「これで良い」と思える基準を作ることも大切です。例えば、「今日は小さなことでもやり遂げたから自分を褒めよう」と、自分で自分を認める習慣をつけるようにしています。

5. 信頼できる人のフィードバックを大切にする

すべての評価を受け入れる必要はありません。私にとって大切なのは、信頼できる人からのフィードバックです。それが厳しい意見だったとしても、悪意ではなく、私を思ってのものだと感じられる相手なら、心に留めて前向きに活かそうと思えます。


期待から解放されると見えるもの


他者の期待に振り回されないことは、簡単ではありません。けれども、それができたとき、自分の心はとても軽くなります。期待や評価をすべて真に受ける必要はない、自分にとって必要なものだけを選べばいい――そう思えるようになったとき、社会との関わりも少しだけ楽になりました。


最後に


他者の期待や評価は、私たちを縛ることもあれば、支えてくれることもあります。その違いは、自分がどう受け止めるかにかかっています。私はまだそのバランスを完全に取ることはできていませんが、自分のペースで向き合っていこうと思っています。


次回は、「期待に応えられなかったときの心の整理」について考えていきます。失敗や挫折からどう立ち直るか、そのヒントを探していきたいと思います。

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