第2話

 もう終わる。もうすぐで終わる。夏木守の復讐の仕方はとても簡単だった。強行突破。文字通り、娘と妻を殺した人間が少年院から出てくるところを殺す。、犯人のいる場所を特定するのは、とても簡単だった。少年院で働いている。原田智彦という男に接近して、自白剤を酒に混ぜて聞き出した。

「あいつはぁー、全然。反省しないんですよ。人殺してもー、「俺はもうすぐで自由になるからぁー」、とかいうんですよね」

酒に酔った原田智彦は、夏木守が聞いていなかったことも話し出す。

「でねえ。あいつ。玉田はぁー。」

そこで意識が飛んだのか。原田智彦は、眠りについた。だがしかし、夏木守の娘と妻を殺した男の名前が分かった。そして、その男が今まで身を隠していた場所も。



母は、文字通りのクズだった。父が死んでから、仕事をやめて薬物に手を出すようになった。それからだった。俺に八つ当たりが来るようになったのは、「うるせぇー」、と俺にむかって、回し蹴りを繰り出す。部屋は母のきわどい服が散らかっていた。ろくに掃除もしてないから、ごみ屋敷になったこの部屋は、衛生上はよくなかった。

「ぐっ」、と部屋のどこかの壁に激突した。

「あんたなんて、いなくなればいいのよ!それなら、私は、もっと羽ばたけたのに」

何を言っているのかわからないが、だがしかし、母は薬物のせいで完全に狂っている。

それから、俺が、高校卒業まで、ずっと母と一緒にあのごみ屋敷で過ごしてきた。そして、別れの日がやってくる。

ピンポーンとインターホンが鳴る。

「国のものですが、玉田ひろ子さんはいますか?」

母は、やけに冷静だった。

「はい・・・・」

母は、なぜか両手を国の男に突き出した。国の男は、静かに後ろの男に、「連れていけ」、と言った。

「君は」、と俺に気づいた男は、部屋に土足で入り込み。近づいてくる。

「君は、玉田ヒロト君だね」

「そうです」

母が連れていかれて、俺は、(ありがとう)と思った。もうこれで、あの部屋にも母にも合うことはなくなる。

「君は今から、児童養護施設に来てもらうから」

国の男は、怖い顔で、俺に言った。「はい・・・」、と俺は言うしかなかった。


「どうした?」

「ああ、すまない。」

いったい、いつから、母と同じような人生を歩んでいたのか。

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怪物を殺した男 @HANAMIHANATABA

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