やり直し精霊姫ですが、王子様と探偵活動しています!~アストラル王国・秘密探偵団~
鰯野つみれ
プロローグ「やがて祝福の魔法は降り注ぐ」
晴れ渡った空には魔法花火が色とりどりに弾けている。
どこからともなく出現した霧状の水が虹を作りながら地面に降り注ぐと、みるみるうちに一帯に植物のつるが増殖して、そこに薔薇に似た花が、キラキラと七色の光を放ち輝きながら咲き乱れる。
これも魔法の花だ。
やがて強くつむじ風が吹くと、それに乗ってザアッと空高く花びらが舞い上がった。
きっと創生史上初、これまでに誰も見たことがない規模の祝福の魔法だ。
しかも火・土・風・水、そして光と闇、存在が認められている全ての魔法属性を組み合わせた大魔法。
「わあぁ……なんて、きれいなの」
思わずはしゃいだ声が口から漏れていた。
そのくらい美しい、心に残る光景だ。きっと城中、いや城下町の住人にとっても。
だって、どよめきと歓声が城外からも響いている……。
「これは本当に、すごいな……。ね、イリス」
にこり、と澄んだ水色の瞳を細めて笑いかけられて、魔法だけでなく、風にそよぐ金糸のような髪の毛がさらさらと揺れて光る現実の美しさにも視線を奪われて、ドキドキと心臓が跳ねる。
うっ……。魔法だけじゃなくって、アルウィン殿下ご本人も、美し過ぎてまぶしいっ……。
顔が赤くなっているかもしれないと察して、私は思わず身を引いて離れようとした。
いたたまれなくて。
けれども、握る手の力を意識的に少し強くされる。「ダメだよ」と言いたげに。
「ねぇ。今、君が僕のことをちゃんと意識してくれているのかもしれない、って考えて勝手に嬉しくなってしまったのだけど。少しは合っているかな?イリス」
「ひゃあっ……!?か、からかわないで下さいっ……」
な、なんか、声が甘いんですけど!?
囁き声は耳にひどくくすぐったかった。
いたずらっ子のような笑い方は、王子らしい取り澄ました顔ではなくて。
心の底から楽しんでいる時の、完全に心を許している時の顔つきなんだって、私はもう知ってしまった。
……だって、全部、名探偵な彼が言う通り。
最近の私はずっとこの方のことばかり意識している。
フワフワと浮ついた気持ちが強いのに、たまに胸がキュッとしめつけられたみたいに痛くて破裂しそうになって、ちょっとしたことですごく苦しくなるのに、同じくらい、とんでもなく楽しくて嬉しくもなる。
その水色の瞳に見つめられるたびに。
そんな気持ちなんて、そしてそんな気持ちを人は「恋」と言うなんてことも、私は全然知らなかったんだ。
こうして二周目の人生、彼と出会って共に行動するまでは。
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