第3話 アライクブラックドラゴンを倒せ!

 頷くオレに、教官は続けて作戦を説明した。


黒疑竜アライクブラックドラゴンは炎に弱いが、電撃や物理攻撃には強い。まともに電撃刀ビリビリソード光の刀ライトニングソードで叩いてもほとんど効果はないだろう。狙うなら生物に共通する弱点だ」

「つまり?」

「目だ。他にも弱点はあるだろうが、狙いやすいのはそこだろう」

「了解です」


 目を狙うなんて残酷にも感じるが、相手はオレの幼なじみを焼いたモンスターだ。同情も躊躇もするわけがない。

 そのとき、蒼ちゃんが叫んだ。


「だめ、もう限界!」


 その瞬間。ピキーンという音とともに、火の杖フレアスティックの宝石が割れて、火炎が止まった。

 よろけた黒疑竜アライクブラックドラゴンにオレは駆けた。

 黒疑竜アライクブラックドラゴンは立ち上がろうとしたが、その動きは鈍かった。蒼ちゃんの火炎は強力だったし、炎に巻かれている間は息もできなかったのだろう。


 狙うなら目!


 ヤツが完全に起き上がったら、目にはとどかなくなってしまう。

 叩くなら今だ。

 オレはそれだけを考えて、電撃刀ビリビリソードをヤツの目にたたきつけた。


「ぐぎぁぁぁ!」


 黒疑竜アライクブラックドラゴン苦しげにうめいた。

 だが、それすら致命傷にはならなかったらしく、むしろ怒りの瞳がオレをにらんだ。

 そこに、教官が襲いかかる。光の刀ライトニングソードがヤツの右目に突き刺さった。


「私よりも早く飛び出すとはな。その覚悟を褒めるべきか、あるいはむちゃをしかるべきか」


 そうオレに言いながらも、教官は光の刀ライトニングソードで今度は黒疑竜アライクブラックドラゴンの左目を攻撃。

 両方の目を潰され、黒疑竜アライクブラックドラゴンは苦悶の鳴き声を上げた。


「やった?」


 オレが言うが、教官は「まだだっ!」と叫んだ。


「まだ、ヤツは生きている。死んだならモンスターは黒い霧となって消える!」


 そうだった。死んだモンスターは死体すら残らない。

 ならば、まだヤツは生きている。

 視界を完全に失った黒疑竜アライクブラックドラゴンは、もはや正気も失ったのかもしれない。


「ぐぎゃぁぁぁぁ!」


 大きく嘶いて、大暴れを始めた。

 偶然だろうけど、その先には蒼ちゃんがいた。


「きゃぁぁぁぁ!」


 火の杖フレアスティックもない蒼ちゃんに抵抗するすべはない。逃げることすらできず、蒼ちゃんは棒立ち状態。


「蒼ちゃん!」


 オレは叫んで駆け寄ろうとしたが、間に合わない!

 駆け寄ったからって何ができたというわけでもないだろうが。

 代わりに蒼ちゃんを助けてくれたのは教官だった。

 蒼ちゃんを押し倒すようにして、その場で転がった。


 それで、ひとまず黒疑竜アライクブラックドラゴンの攻撃はかわせたが、二人とも倒れ込んでしまった。次はかわせないだろう。


 こうなったら、オレがやるしかないっ!


 だが、目の前にいるのは象ほどの大きさと、それ以上の力を持ったモンスターだ。

 いくら視界と正気を失っていても……いや、だからこそむちゃくちゃに大暴れするコイツ相手ではどうにも……


 ええい! 躊躇なんてしていられるかっ。

 挑英とも約束したんだ。蒼ちゃんを絶対に助ける!


 オレが黒疑竜アライクブラックドラゴンに襲いかかろうとしたときだった。

 部屋の反対側で『パンパン!』と何かがはじけるような音がした。

 視界を失ったため状況が理解できなかったのだろう。

 黒疑竜アライクブラックドラゴンはその音に敏感に反応して、暴れるのをやめた。


 今のは?

 爆豆パンパンまめか! 挑英が部屋の反対側の壁に投げつけたらしい。さすが野球部のエースだ。


 この瞬間。今やらなかったら!

 黒疑竜アライクブラックドラゴンが驚きとまどっているうちに攻撃するしかない!

 まともにたたいても無駄。

 弱点を攻めないと。目はもう潰した。

 もう一度目を攻撃しようにも、完全に立ち上がってしまったヤツの目は、オレの身長よりも高い位置にある。


 なら、他の弱点を……

 ダンジョンアドベンチュラ-になる決意を伝えたら、剣道の師範が教えてくれた。


 人間の体にはいくつか弱点がある。中には剣道の試合では狙ってはいけない部分もある。

 だが、モンスター相手ならば話は別だ。弱点をついてでも生き残ることが第一。

 もちろん、人間とモンスターでは弱点も違うだろうが共通することもあるだろう。


 脳みそ? 心臓?

 無理だ。電撃刀ビリビリソードでヤツの巨体の脳や心臓をどうこうできるとは思えない。

 金的?

 男……オスなら最大の弱点だが、最初からコイツにはなさそうだ。

 メスなのか、雌雄しゆうの区別がないのかは知らないけど。


 だとしたら……


 喉元!

 浅はかな考えかもしれないけど、とっさに思いついたのはそれだった。

 立ち上がった奴の頭部の下に回り込み、電撃刀ビリビリソードで思いっきり喉元をついてやった。


「ぐぎゃぁぁぁぁ!」


 黒疑竜アライクブラックドラゴンは苦悶の声を上げ、そのまま倒れ込んだ。

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