第一回 五人 Journey to the West

 星の瞬きさえない漆黒の宇宙を、巨大な白い物体が凄まじいスピードで飛んでいた。

 そこは銀河系から隔絶された亜空間回廊の中で、飛んでいるのは亜光速で航行する宇宙船であった。


 その宇宙船内にはいくつもの部屋があったが、その中の一つに、四人の人物が入ってきた。

 四人が入ってくると、まっくらだった部屋に照明がつき、瞬く間に部屋の中は明るくなった。部屋の中には大きなテーブルと、椅子が六つあった。ここはどうやらミーティングルームのようだ。


「おい、玉龍ぎょくりゅう。全員集まったぞ」

 四人のうちの一人が言った。それは若い女の声だった。

 

 ピー、ガガガガガ、ピーピーピー、キュキュキュキュキュキュ……

 複雑な電子音が部屋のなかに鳴り響いた。

 そして、電子音がなり終わると、ヴオンという唸りとともに、テーブルの上にホログラムの立体映像が映し出された。


 それは幼い少女の映像だった。


「はい。お疲れ様です」

映像の少女は笑みを浮かべながら返事をした。


 少女の年齢は外見から見て八歳といったところだ。長い髪を飛仙髻ひせんけいに結い、美しい衣装で身体を着飾っていた。


 少女の返事を聞くと、四人はテーブルの周りの椅子にそれぞれ腰掛けた。


四人の着席を待ち、少女は話し始めた。

「それではこれよりブリーフィングを開始します……

と言いたいところですが、その前にしなければいけないことがあります」

「なんだよ」

 さっきの若い女が聞き返した。

「出欠を取ります!」

「はあ?なんでそんなモン取んなきゃいけないんだよ?あたしたちは五人しかいないんだぜ?どう見たって全員揃ってるじゃねえか?」

「念のためです!」

「何が念のためだよ……」


「やれやれ、玉龍のマイペースぶりにも困ったものだな」

 若い男の声がつぶやいた。


「とにかく出欠を取ります!皆さん、いいですね!」

「わったよ。やればいいんだろ、やれば……」


「それでは、これより出欠を取ります!呼ばれた人は起立して返事をして下さい!」


「では、まず猪八戒ちょはっかいさん!」


「うーす」

 猪八戒と呼ばれたのは、先ほど少女と話していた若い女だった。

 年齢は外見から見て十六歳。背の高い女だった。

 深緑色のハンチング帽を被り、帽子と同じ色のジャケットを着て、長くて黄色いスカーフを首に巻いていた。下には、白いスラックスを履いていた。帽子から茶色い長い髪が背中に流れていた。


「つぎは、沙悟浄さごじょうさん!」


「うむ」

 沙悟浄と呼ばれたのは、少女をマイペースと言っていた若い男だった。

 年齢は外見から見て二十歳。背の高い男だった。

 男の髪、銀髪で、長い髪だった。白い簡素な服を着ていた。大きな黒い玉をつらねたとても大きなネックレスを首から下げていた。


「つぎは、孫悟空そんごくうさん!」


「おう」

 孫悟空と呼ばれたのは、若い男だった。

 年齢は外見から見て十八歳。中肉中背の男だった。

 髪は短く、赤い髪だった。黄色い服を着ていた。


「つぎは、わたくし、玉龍!はーい!」

 映像の少女は自分を玉龍と名乗った。


「そして、最後は……三蔵法師さんぞうほうし様!」


「玉龍、三蔵法師じゃなくて、江流こうりゅうって呼んでって言ってるでしょ……」

 三蔵法師と呼ばれたのは美しい少年だった。

 年齢は外見から見て十一歳。年相応に背の低い少年だった。

 髪は金髪で、細くふわふわとした髪だった。

 白いローブで全身を包み、上半身には金色のケープを掛けていた。


「無事全員の出席が確認できましたので、これよりブリーフィングを開始します!」

 玉龍は元気な声で説明を始めた。

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