5

 *


 『あとには引かせねぇ』


 引くつもりなんかない。


 間違えた?

 間違えても。


 『前にすすめなくなったら、』


 いや、


 顔を上げて空を仰ぐ。


 はじめて見るシアンブルー。

 緩い陽射し。

 横浜より透明で暖かくて、心地よい。


 雪を抱き上げる。空に近づく。

 「うああぁぁぁぁああ!」

 見上げたシアンブルーの空を、おもちゃの列車が疾走する。


 マリンブルーのプラレール。

 千葉ちゃんが横浜駅で雪に買ってくれた、ロイヤルエクスプレスだ。豪華列車はご機嫌に、オレには見えないレールを縦横無尽に走りまわる。


 「あうあぁぁぁぁ!」

 しおらしかったのはあの晩だけで、あっさり化けの皮が剥がれたチビは乱暴でわがままで、オレの理解をはるかに超えた愛しいベイベだった。

 「ご機嫌だな、雪」

 「ぶぶぶぶぶぶぅ!」

 頬ずりすると躊躇いなくプラレールでオレのあたまを叩いてくる。

 「手癖悪りぃなぁ、雪。だれに似たんだ?」

 間違いなくオレだろう。オレのもんになってからまだ二日だけど。

 

 「ご機嫌だ、雪。にぃちゃんも、」


 すすめない? いや、大丈夫。まだ一歩だって踏みだしてない。


 イメージとはちょっと違った、けど。

 このご機嫌な空の下に、ご機嫌ななにかがまっていないはずがないだろ? だってさ、


 「Life is,」

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