異世界から帰ってきた勇者様、今度はラブコメの親友ポジとして暗躍するようです。

あくはに@ 『孫ダン』執筆中

第1話 勇者様は帰って来た。

「やっと、帰ってこれたよ...」


 女神さんが言っていた通り、召喚された直後に戻って来たっぽい。

 

 にしても、異世界には10年もいたから、本当なら26歳なんだけど、16歳っての実感湧かねぇ〜。


 ホントに異世界は思ったよりクソだったしな。召喚特典みたいなのは無かったし。

 結局、俺の才能と努力だけでのゴリ押しだったしぃ。


「はぁ〜、嫌だ嫌だ。もう、異世界のことなんて忘れよ」


 ていうか、今日から新学年だったな。


 ...色々と大丈夫かねぇ?


「あっ!霧崎君、おはよう!」


「ホントだ。おはよう、咲夜」


 ん?この聞き覚えのある声は...


「雨宮と優也か!!」


 おぉ!10年ぶりだなぁ。当たり前だが、全然変わってない!!


 まぁ、あいつらからしたら、全然久しぶりじゃないんだろうけど。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 ここで、俺達の紹介をしよう。


 俺こと、「霧崎 咲夜」と小学校からの親友の「橘 優也」と、その幼馴染みの「雨宮 美涼」だ。


 そして、優也はいわゆる『ラブコメ主人公』とやらだ。ホンットにモテる。そして、鈍感系主人公だ。

 要するに、優也は、鈍感系ハーレムラブコメ主人公と言ったところか。


 一方で美涼は、やっぱりと言うべきか美少女かつ、優也に惚れている。まぁ、正統派美少女幼馴染みと言ったところだな。無論、こちらもモテる。


 最後に俺、異世界で10年間勇者やってました。


 以上!終わり!!


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 3人で学校に喋りながら向かっていると、優也がこっちを見てくる。


「咲夜、なんか雰囲気変わった?」


 やっぱ、気付くよなぁ。まぁ、惚けるけどね。


「そうか?」


 雨宮もそう思っているのか、目配せをして聞いてみる。


「うん。私もそう思う。なんか、大人びた感じ?」


 ほーん。雨宮とは中学校からの付き合いだけど、分かるのか。


「うーん?分かんね」


 2人が、やっぱ、変わったよねって顔を見合わせている。


「それよか、女誑しの優也は、新入生を何人落とすのやら」


 敢えて、雨宮を見る。


「...確かに」


 雨宮は、ジト目で優也を見る。


「えっ!?僕は女誑しじゃないよ!!」


 ふっ...この無自覚さが、ラブコメ主人公クオリティよ。


「はいはい。優也君は、女誑しじゃなくて、女誑しを超えた女誑し、スーパー女誑しだったな」


 その後も、ごちゃごちゃ言っている優也を軽くあしらう。


「あ、後、雨宮。多分だけど、今年は更に、優也関係は波乱万丈になると思うから覚悟した方がいいよ」


 俺の言葉に雨宮は、間抜け面をする。


「え?」


「ちょっ!?咲夜!?それって、どういう事!?」


 優也を無視しつつ、話し続ける。


「去年は、あまり人助けイベント少なかっただろ?その分が、今年来ると思うんだよね。まぁ、勘だけどね」


 ...勘は勘でも、異世界で鍛えられた勇者の勘だから、まず外れることは無いでしょ。


「...確かに、去年は何も無さ過ぎたよね?」


「だろぉ?」


 まだ、優也は何か言ってるが、フルシカトする。


「まっ、てなわけで、アイツ以外にもライバルが増えるだろうから頑張れよって話」


「霧崎君は、私を手伝ってくれる?」


「もち。でも...」


 雨宮以外に、優也を好きになったやつが現れれば、そいつも手伝うけどね。って言外に伝える。


「それは分かってるよ」


「なら良し!」


 てか、新一年生には既に優也を好きだと言っているのが1人いるしな。

 その事は、もちろん雨宮も分かっていることだろう。何せ、俺たち3人とソイツは中学から一緒だからな。


「ねぇ、ちょっと僕の話も聞いてくれない?」


 いい加減、相手してやるか。


「しつこい男は嫌われるぞっ!」


 茶目っ気たっぷりで返事をするも、目を逸らされる。


「大丈夫だよ!私は(優也がしつこくても)嫌いにならないから!」


「?」


 優也に向かって、胸の前で拳をグッってしながら雨宮が言うが、優也は雨宮の言ってる意味を分かっていないらしい。


「おい!折角、俺が可愛く言ってやったんだから反応くらいしろよ!!」


 俺の訴えは、2人によって完全に無視される。


「ははっ」


 この感じが懐かしくて、思わず笑ってしまう。


「どうした?咲夜」


「私達が無視したせいで可笑しくなっちゃったのかな?」


 2人とも、急に笑った俺を本気で心配そうにする。


「いやいや。な〜んか、これでこそ俺らだなぁって思ってね」


 しみじみとそう言うと。


「やっぱり、なんか違うよね?」


「うん。いつもと違う感じがする」


 そんな2人の探るような視線を流しながら、小走りを始める。


「早くしろ!話しすぎたせいで、割と時間ギリギリだぞ!」


「「えっ!?」」


 慌てた2人が追いかけて来る。


 やっと、故郷に戻って来たんだ。


 この当たり前の日常の幸せを噛み締めていこう。




 ...それくらいなら、






 

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