カバとマシンガンと女の子2
「今、サトルって言った?」
「ストーリーと言ったんだ!」
「絶対サトル言ったよ」
「殺すぞ、人類」
「やってみ」
マシンガンはしかし、嬉しかった。
-
ツチノトは、どこを見ているか解らない男だった。いつもどこも見ていないと濁すが、本当はどこかを見ていた。ツチノトはどこかを見ていた。
「桂ちゃん!ごめんって!」
「何が!?あんたなんか大っ嫌いなんだから、もう消えてよ」
「、、、」
テーブルを囲み、それはもう、私たちは話し合っています、もう2,3時間は居座ります臭を漂わす、バンド「ユウホドウ」は、ただただ店員を困らせた。
そのパン屋は、「ひなたベーカリー」といった____。
偶然にも、交番の前のワイン等アルコール店と同じ名前だった。桂は、レノンだけ見た。
「でも、レノンはちゃんとやろうね!」
突然、にこやかな表情になる、兎瓦けいに似て非なる、女。レノン を見つめたまま、何かを思いついたように、脳みそから直接言葉を投げかけた。
何の思考も躊躇もなかった。
「、、、。、、、。、、、。一億曲!!」
「だから、お前それ思い出さすなって!」
「はっはっはっはっは。ってか、その話マジでうけるよね。やっぱ人間ってウケるわ」
「人間っていうか、そいつがな」
松雪香のことだった。まさか、こんなところでダシにされてるとは思いもしなかっただろう。
「さて」
桂とマシンガンは、席を立った。
「スタジオ入るか」
-
「何じろじろ見てんだよ、おい」
「あすいません、ここどこですか!あのあたし、ちょ」
「求喰川(あさりがわ)」
「、、、あ、アサリガワ!はいありがとうごじゃい、す。失礼します!!」
「ちょ」
「久しぶりだな、月」
時が止まった。
「、、、どこかで会ったか?」
「、、、」
「(マシンガン、、、!知り合い!?)いや、いやいや、失礼します!」
「待てよ」
男は3人目の月だった。
役者は揃ったようだった。
兎瓦(うさぎがわら)けいは、どこか腑に落ちなかった。このよくわからない恰好をした、人魚のような、人物がマシンガン(ただいまはゆりの姿)と知り合いのようなのである。もう、どうにでもなれ、と思うのも飽きたので、しゃべることにした。「マシンガン、このヒト知ってんけ?」
「親友だ。そうだな、尼李(あまりい)」
「誰だ!?親友!?」
「、、、ちげえじゃねえか」
「、、、」
「恵比寿に親友はいないが、、、。悪かったな、想い出せそうにない。、、、今、仕事が忙しいので消えてくれるとありがたい。新入り。ちゃお」
マシンガンと、けいはそこを離れた。
「とんだ赤っ恥かいたな、おめ。一体誰と勘違いしたんだ?あの尾っぽだけ見て、上見たか?」「たわけが」
マシンガンは、何かを引き続き考えているようだった。こともあろうか、波の色は、オレンジだった。空はことごとく紫である。本当に不思議な落ち着きを持った場所だった。けいは、呼吸を大袈裟にさせた。
「(、、、っすぅ。)」
いつか、来たいと思った場所なのかもしれない、と自分に酔ってみた。
木村優美は、一人砂浜で画を描いていた。マシンガンをけいに、託してから、ヒマを潰し直していたのだった。ヒマを潰すことは、この世界では、とても重要なことだ。
「何か言ったか?マシンガン」
ただいまのけいは、あの兎瓦けいではなかった。
花びらのような、髪に2本生えた触手のようなものを携え、制服ではなく、黒い味気のないローブを着た、不思議な色の瞳を持った、女の子だった。しかし、年齢はけいと離れてる印象は薄い。マシンガンは返した。「この国の言葉でしゃべったのだ。なんてな! 一回言ってみたかったんだ、このフレーズ!」
「まあ、わからなくもねえかな!ってわかんねえよ!あ、そうだ!マシンガンせっかくだからちょっと歩いてみようぜ」
「お前が勝手に行くのだ。おれを連れて」
ふん、とけいは、歩を進めた。 マシンガンは、一言発した。
「S-2easuntwice(エスニーサントゥワイス)」
「あ!?」
「お前の身に危険が、迫った時、迷わずその言葉を叫べ! わたしが、けい、お前を助ける!!!」
「いや、覚えらんねえな、なんつった今?」
「、、、こんなものか、人類の記憶力」
「いや、うるせえし!なんて!?」
「S-2easuntwiceだ。いいな」
「わかったよ、マシンガン様(、、、っくね。)」
「いいな、今のは良かったな」
「ははははっ」
2頭に迫る、怪しい影が。
明日。その、言葉を放った。曲名だった。
「思い出した!あんた!」
マシンガンは、せっかく思いついた曲名を忘れたくなかったので、わざと声に振り返らなかった。代わりに、けいが返事をした。
「、、、ど、どうしました?」
追ってきていたのは、人魚だった。走ったのだろう、汗が。いや、汗はかいていなかった。
「桂(けい)だろ!!」
確かに自分は、兎瓦けいだったが、その事実をこの相手に知られている心当たりは、なかった。マシンガンは呟いた。「わたしのことじゃないんかい」
もしくは知られているはずもない名前。けいは、黙った。警戒した。誰だっけ、こいつは。人間以外で、知り合いはそんなにはいなかった。
たとえ、この身砕けても、と歌詞を作っているマシンガン。徐々に、ゆりの花ではなくなり始めている。尾びれの先端が、花びらが形状変換をすることによって、その過程をさらしている。花びらはヒレになろうとしていた。中途半端な状態だった。もとのマシンガンに戻ろうとしていることは、間違いないようだった。
けいも、女子高生のけいに姿を少しずつ戻し始めていた。目は、もう完全に彼女のものである。
マシンガンは、無視をし続けた。単にふてくされていた。代わりに、兎瓦けいが相手をする。「、、、」
マシンガンは、以前を思い出してあったかい気持ちには、なっていた。
自分が、ヨウフだった頃を___。
「マウヅか!」
人魚は叫んだ。喉からふりしぼった。マシンガンは振り返った。用意していた台詞を放った。
「いかにも我は」
「おお!!喋りだした!どうしたおめ!!」
けいは、茶化した。べつに聞きたくなかった。
-
スティーブは明けた朝に、体を気持ち良く伸ばした。
仁美は、まだ寝ている。
視界のまったくきかない、というか周りに何も見えないこんな場所で、起きても何か時間が経った、その実感はないが、明るくはなっているので、朝そういうことにした。
スティーブは言った、
「ヒマだ」
スティーブは、いつかの甘い記憶に、ただ浸っていた。彼が、初めて、ラップバトル、出場者が互いに、培った、ラップパフォーマンス、磨き上げてきた技能及びメッセージ伝達力を、制限時間内に、競い合う大会(ちなみに彼はラッパーである)に出場、優勝した時の、記憶である。だが、目の前のさっきから、服をたたんでばかりの相変わらずちっとも自分との、距離感を変えようとしない物静かな、八千草仁美という女性には話す気になれない。興味がないことは、わかりきっているからだった。
本当にわかりきっていた。もう二週間も一緒に、完全に、事故的ではあるのだが、生活を共にしているのにおそらく、時間にしたら、多めに見積もっても、ほんの合計で、カップラーメンをつくり終わる時間ほどしか、意思の疎通を行っていないのでは、ないだろうか。女がいれば、生活が潤うのではとは考えが余りにも、甘かったと言えるかもしれない、とスティーブはほぼ声に出して、聞こえないように想いを発した。何かを喋ろう、と思った。
「仁美、、、ちゃん?あのさあ多分なんだけど、ねっおれらもっと仲良くした方が、たぶんいいんじゃないかそんなこと思ったり、さあのするわけなんだけどどう思うでございましょうかあはははははってどこ行くのって仁美ちゃちょっともしも八千草仁美ちゃあの!ちょっとは話聞いてくれって言ってんのに、なんなんだよあいつ!もう知らねえ!あれどうしたの仁美ちゃんっ何その恰好!!」
仁美は、エプロンに身を包んでいた。表情を、余りにも、閉ざしたまま、こう言った。
「一緒に、ご飯でもつくる?スティーブさん」
スティーブはとりあえず目の前がパっと明るくなった。
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