キリンとマシンガンと女の子(名前はけい)
「こらぁぁぁ、吐きもどすなー!!」
「この小娘は、食すなと言ったり
「っうあ、きったね~!本当に百害あって一利なしだな、このシャチはぁ!」
第2話キリンとマシンガンと女の子
ここは、兎瓦邸。
一人の女の子と体長30cmのシャチが、物語の中心、「アイ」を叫ぶ中心である。
だったはずだが、どうやらもう一頭増えていた。
「よろしく!」
ナイスな発音で、行儀よく、しかし失礼にも彼女の頭に、居座るのは、また別の喋るシャチであった。名を、自治医大、と言うらしい。言うらしいが、一人、、、
「っほんっとに、もう出てってくんねかなぁ!もうドライヤーいんねからぁ!」
一人、この状況に、間違っても納得してない人物がいた。下の名前を、けい、という女子高生である。ちなみに、栃木である。
「待たんか。旧友との再会なのだ。菓子でもふるまわねば、わたしもこう、気が済まない」
けいに対するは、マシンガン、という不吉な名を名乗る、理不尽の根源である。
「だからって、吐きもどして、あた、あたしの電気製品だったものを!」
「落ち着け、ろくなものが手元にないのだから、仕方がない」
「うるせぇよ!おめぇが全部食っちまったんだべぇっ!?」
「まぁ、認めざるを得ない事実では、あるかな。」
間を置いて、マシンガンが目の色を変える。友達の自治医大は、彼女の頭で、気持ちいいのか、眠りにつきはじめている。何しに、ここにいるのだ、コイツは。彼女は、もう気にしないことにした。この変なのが、一匹増えようが、3万匹になろうが知ったこと、まあ、それは本気で困るかもしれない。今は、とにかく
「お前の願いが必要だ」
マシンガンは説明を開始した。
★
「自治医大、あの娘、どう思う」
「、、、魅力的な娘だと思うよ?なまってるし。」
「お前のフェチ的なモノに興味はないんだが、、、。わたしの目に狂いはなかったか、心配でな」
「、、、っきゃっは!よくあんたら、本人の前でそんだけ憎まれ口叩けるねっ!感心するわ!」
陰口をやめない、二匹の小動物。どういうわけか、この謎そのもの。現在は、何百人もの好奇の目にさらされている。
「えー、そんなわけで皆さん!これを次とない機会とみなしましてですねー! ウチの学校で、この4匹のシャチらしき生物を、えー、飼う、と、えーこのようになりま、(ピー)
突然、マイクの電源が切られた。
「え、あれ?」
突然、鳴り響くのは、Rollin' Stones。ガン、と校長のスタンドマイクを口先で突き倒し、全校生徒に向き直ったのは、マシンガン。辺りは、そのシャチに視線の集中砲火である。シャチは、全く動じない。低い声を、BGMをしのぐ音量で、目の覚める鋭さ、喝、というフレーズが似合う調子で繰り出す。曰く!
「よく聞け、お前らぁっ!」ゾク、とけいはイヤな予感がした。不幸にも、それは正しかった。
「兎瓦けい!こいつを、幸せにしろぉ」
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まぶたの裏には、いつもシャチがいて遊びたいなぁ、と思っても、それは叶わないことだと知っていた。せめて、この想いだけは、正しい形で奴らに示せてやれたら、と思う。糸井宏徳
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3年5組。ここは、兎瓦けいの存在が、学校という建築物の中で、ただ一か所、生活することが認められた「教室」という空間に分類される場所である。
「きゃあ、かわいい!」
「ねえねえ、しゃべって!またしゃべって!ちょっと、あたしの名前言ってみて?まー、ゆー、み」
すごいことになっていた。30人余りの、生徒が、この教室にて、4匹の小動物を取り囲み、止むことのない質問、仰天、そして降り注ぐ洪水のような、声、声、声。
「おい、やめろ、お前ら、動物虐待になるだろ?かまいすぎるな!」
「構わんよ」
制止する声に、まあまあと諭すマシンガン。
「悪い気はしない」
いやらしい笑みを浮かべていた。
教室では非日常が、吹き荒れていたが、ある女の子の一言でしんと静まり返る。
「みんなー!マシンガンが調子に乗るからいい加減にしてよっ」
シャチ「マシンガン」がおもむろに自身のギターに寄りかかる。ち ち とリズムを取っているようだ。センサーのようなものに意識を集中させているようにも見える。瞬間「小山が来る!」
小さく叫ぶマシンガン。どういうことか、傍若無人のこの雄がえらくビビっている。特に気にも停めない、周りのオーディエンスが少しずつ活気を取り戻そうとしたその時_
ばっしゃあ、と軽い洪水なようなものが室内_ 「ハロー、兄貴~」
浸食してきた水に、跳ねるように滑り込んできたのは別のシャチである。しかし、マシンガンや、自治医大とは、こう体格と醸し出すオーラの質が違う。三頭中、唯一のメスであった。
「きゃっはーもう一匹来たァ」
辺りは盛り上がるばかりだ。制止の水流が、辺りにぶちまけられる。あ然とし、黙り出す生徒達。それに全く構わないメスのシャチ。言葉をマシンガンに告げる。
「恩返しの時間だわよ、兄貴」
さっきまでの、お騒ぎムードとは打って代わって、シリアスモードの室内である。いきなり現れた、シャチ達にいよいよ疑問を持つものが現れ始める。少し遅すぎるが。
シャチに、単刀直入に聞いた。
ただただ生徒達は、?を浮かべるしかなかった。説明を続けるマシンガン。
「兎瓦けいを、幸せにすること、それがお前ら全員の使命だ。わたしはその娘に借りがある。食事を恵んでもらった礼に今、こうしてお前たちの協力を借りて、精一杯の礼を返そうとしているのだ。ただ、けいには、この先も願ってもらう。命を、助け合いをだ。なあ、けい。わかるな?」
「はいはい」
パンパンと両手を打ち始めるけい。さっきから目に神経が通ってない。まるで、意図していない穴から出てきたモグラのようだ。
「忘れてください、皆さん。もういいんです。第一、わたしはこのヒト、シャチ、に特別何かをしてあげたわけではございません。これが勝手に勘違いして、わたしを仏陀かなにかとでも勘違いしているのでしょう。はいはい、授業が始まります。みんなキレイかっちり忘れましょう。クラスにペットができた、それでじゅう」
ビシ。空気が歪んだ。
見ると、マシンガンは、大きく口を開けており、どうやら威嚇している様に見えた。
「調子に乗るな、」
言い始めたマシンガンは、突然硬直した。
「マシンガン。早く行かないと」
小山がそっと促す。もはや、わけがわからない生徒達。
「来る」
マシンガンはまだ怒りに震えていた。
キリンである。校舎にキリンである。もう一度繰り返す。アサリ川中央高等学校で、キリン
「うお、おい見てみろ、みんな」
出没である。
校舎は、コの字の形をとっており、校庭と呼ばれるものは、コをパックマンとするなら、口、そこのみである。三方を、建物に囲まれた、平地というわけである。
そこに、
「やるぞ、自治医大!!」「へ~い、マシンガン」そこに、
「ばか、あたしもいるっての!小山ちゃんでーす!」
そこに、
「うぃっす。鹿沼です。申し遅れたね」
そこに、キリンとどさくさで初登場かます一頭含めたシャチ四頭である。
「あーもう、わけがわかんない」
兎瓦けいは、もう出尽くした度肝を新たに抜き直しているところである。彼女は、数日前、マシンガンの意味不明なマインドから繰り出された、現状における自分に向けられた、期待、寒気がするような、を思い出していた。
曰わく!
「わたしは、人間の心を形にするためにやってきた。代わりに、人間のつくった物質を捕食して生きている。わたしの役目は、お前が助けたい、とする願いを、一つずつ実現するためにやってきたのだ」
走り出すけい。
「こらあ、何しようとしてんだがわからんが、やめろぅ」
血相変えて、キリンとシャチたちの間、そこに割り込んだのは、兎瓦けいである。意味不明の歓声が上がる。
「ちょ、おいおい!あれ誰だよ!」
「兎瓦!あれうちのクラスだってあの、しゃべらねー」
「おい、お前の彼女、イモトみたいなことしてんぞ」
けいには、彼氏がいる。今は、そこはどうでもいい。風が吹いた。自治医大を中心に、つむじ風、渦を巻く、白い色を持つ立ちのぼりが頭上へと打ち上げられた。
「今だ、マシンガン!」しかし、
「お前ら、あたしが今しようとしてることを、即行やめろ!って言ったら、やめろ!」
シャチの行動は、はばかられた。
マシンガンは、一喝。無言で、間に入ってきた女の子を即座になぎ払おうとする。ビシン!
「マシンガン!!」
が物怖じしない、けい。「だいぶどうでもいいのよっ」
「、、、。」
電撃は、なんと彼女の目の前で蒸発するように、絶えた。が、マシンガンの意志か、兎瓦けいの、ともすれば、気合いのようなもの(考察として、ほぼあり得ないが)がそうさせたかは、判断しかねる。
が、そうだったらしい。ひるむマシンガン。30cmほどの、小さな体を後ろに仰け反らせる。
「な!?」
四頭のシャチ達は、硬直し、視線を女の子に向ける。警戒する、が正しい。キリンは、構わずそびえ立つ木、その枝を、くんくんと鼻先でつついている。意に介していない。
「だいぶどうでもいいのよ?キリン、いやだいぶびびってるけど!、が何で、こんなところに、出現してるのか、とか!シャチ!それも絶賛増殖中」
「もう増えないよ?」割り込む自治医大。
「絶賛増殖中!が、言葉しゃべって佐々木先生の目を治した、、、!とか!だいぶどうでもいいのよ!」
黙って話を聞く、シャチたち。けたたましいサイレンの音も近づいてきている。
ホウコウはやまない。
「、、、ほっといてよ!!!!!!!!」
女の子は、肩を裂かれた茎のようにだらりと、落とした。
時にヒトは、説明しようのないものを、目の当たりに、する。経験する。それが種類を、越えた他の動物との間に、起こるときヒトHomo sapiensは、自身達がこの惑星の一部であることを、感情を超えて認識する。木をつつくのをやめたキリンは、くるりと兎瓦けいに歩を進め出す。その距離わずか3m余り。
「きゃあ!!」
校舎、生徒達は悲鳴を漏らし始める。
「キリンに、ひかれる!」
ぽろん、、、。ぽろん、、、。ぽろん、、、。ギターの音が、響いた。ばしゅ、、!たくさんの生徒達が見守る中、無惨にもそれは起こった。 不快としか形容しようのない斬裂音。どしゃごろり。声も出ない、観衆。シャチは、一言も発しない。キリンの、頭部がきれいに絶たれた。
が、次の瞬間
「うわ、見ろアレ!!グロッ!」
キリンの首は、蒸発、続いて、女の子、彼女の持つカバンから飛び出しているギター、その先からまた例の如く気味の悪い飾りのように、キリンの生首登場である。
「聞けー!群がる動物どもぉ!」
演説を開始するマシンガン。見れば、胸ビレがスピーカーの形に変化している。けいは、見覚えのある形だわねえ、自身が所有していたサウンドシステムを思い出していた。
「Etiagun、Kansmarss、Jettoes」
聞き慣れない3つの単語をシャチがはっきりと、発音した。2010年11月21日 午後3時33分
「この世は今唱えた三個の存在から、成り立っている」
静かに耳を預ける生徒達。誰一人として、言葉を発してはいない。
「お前らは知らぬ、と思うがな、人類。これをLaw of threeとする。わたし達シャチ、漢字で本当は威散とふる!はある一つの命を受けてこの場所におる。鈴音、人類の言葉で地球様の命だ。それは、人類のJettoesお前らの言葉で言う心を守るそのためにわたし達がシャチの魂を捨てて手を貸すことだ」
むくく、と首のないキリンは起き上がった。驚くべきことに、血液はでっぱなしの状態で、である。
ミギぃウ!
聞いたこともないような、奇怪な音を立てて、キリンの首は元通った。顎をコキコキと鳴らしている。周りは皆、絶句している。
「平」
誰かれともわず、
「ヘイ」
いつかさえわからない間にか、
「ヘイ」
生徒達は、いい顔をしていた。
「ヘイ」
全く意味はわかっていない。
「ヘイ」
けれども、力をもらっていた。
「HEY!!」
彼ら全員の、奥底に流れるエネルギー、反応、渦巻く意識と、血が。一瞬前、空気中に繰り出された「タダシサ」を。マシンガンが伝えた、愛を。兎瓦けいは、そして巻き起こっている事件を今、視界に入ったそれを、見たとき許せそうになっていた。校門に、一人の女の子である。パトカー。特殊なケージのようなものを後ろに積んだトラック。キリン捕獲準備はすでに整っているようである。あとは、キリンのそばで、じろりと、何かに気を取られ、突っ立っている一人の女子がどいてくれれば、だが。目線の先の、女の子は香耶、という名札を付けて、この異様としか言えない空気の中、はしゃいでいた。
「歯が、痛くなーい!」学校のすぐ隣りに、歯医者がある。香耶ちゃんはお母さんらしき、人物に連れられていた。おそらく10歳程度だろうか。
「そうやってこの子は、また!さっきまで痛いって、泣きわめいてたじゃない!!最後に行ってからずいぶん経ってるんだしって、あれ、何この騒ぎ!き!キリン!?学校に」
歩み寄ってきていた、兎瓦けいは母親に声をかける。
「あのっ絶対なんですけど!っお子さんの、あの、、、その、あたしがや!あたしがやりました!」
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