第4話 澄華を甘く見たものに未来はない
教室へ着けば、廊下に私達を待っていた人がいた。
吹奏楽部の顧問の
確か、澄華と一緒の楽器担当の子だ。
「ちょっと! あんたねぇ!」
原さんが、澄華の顔を見た途端に怒鳴ってくる。
「こら! 謝りに来たんでしょ!」
原さんが、大橋先生に怒られる。
何なんだろう……
「ふふっ!」
不敵な笑みを浮かべた澄華が取り出したのは、スマホだった。
澄華が取り出したスマホから大音量で流れ出したのは、原さんと平さんの声だった。
「これって、澄華の楽譜でしょ? 隠しちゃえ!」
「そうよね。あの子、生意気だし!」
なんだか意地の悪い会話が延々と続く。
おっと……これは、露骨に証拠の録音ってやつではないだろうか。
「これと同じものが、本日の朝の放送で流れたのよ」
「放送? えっと……学校中に?」
これは……えっと……
「本日の朝担当の放送委員を買収してね。彼女、焼きそばパン一個で快く引き受けてくれたわ」
フフンと笑う澄華。
「ジャーナリズムとして、当然の告発よ! って、使命感に燃えていたわ」
そう、澄華は続けた。
放送委員。焼きそばパンで買収されたのは、棚にあげていいのか? いや、この場合、細かいことを気にした方が負けになるのか?
「むかつく……」
原さんが睨んでいる。
いや、原さんが悪いんだからね。そんな意地悪をするから、澄華がぶちぎれちゃったんだから。
「こら、謝りなさいってば!」
校内放送されて、大橋先生は、慌てたことだろう。
それで、原さんと平さんを捕まえて、澄華に謝らせに来たわけだ。
無理矢理大橋先生に頭を押さえつけられて、原さんと平さんは頭を下げたけれども、納得はしていなさそうなのは、睨んでいたから分かる。
「別に、反省してなくてもいいけれど、知らないよ。私は、絶対にやり返すから! 倍返しどころじゃなく、人生潰れる程度にね」
澄華? え、ちょっと、その宣言、それでいいの?
一方的に集団で澄華をいじめているって話じゃなかったの? これは……対抗するには、束でかからなければならないかも。
澄華……恐ろしい子……
大橋先生達が去って教室に入ると、澄華に皆が注目している。
そりゃ、そうよね。そんな放送があったのなら……
「安心したまえ! 皆の衆! この澄華! 決して悪には負けぬのだ!」
澄華が元気に宣言する。
お……おい。ちょっと。そこは、思春期女子としては、ちょっと恥ずかしがって小さくなるところでしょ?
「そもそも誰も心配しねぇよ。やり過ぎだ、馬鹿!」
そう声を返したのは、大滝聡だ。
大滝の言葉で、教室は、笑いに包まれる。
いい感じのツッコミとなったようだ。
なにぃ! と、澄華は、言い返していたが、なんだかとても楽しそうだったし、まあ、いいや。
私は、席について、スマホを見る。
待ち受け画面には、可愛い我が愛猫が映っている。
なんだかゴタゴタしてる朝でも、これで心は癒される。
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