TRPG異世界チート！『初期レベル＋１』で私のレベルが１だけ高い～未収得《0レベル》の技能が１レベルだけ解禁されてすべてのジョブが生えてきました～

第1話 どのチートを選ぶ？

　トラックに轢かれそうな猫を助けようとしてつまづいた私は、気づくとなんだか白い空間に立っていた。

　え？　何ここ？　私、どうなったの？

「気が付きましたか？　あなたは残念ながら死んでしまったのです」

　声のするほうへ顔を向けるとそこには見覚えのある人物が立っていた。

　大地に生える植物の芽の意匠を取り入れたドレス姿は、私のお気に入りのTRPGルールブックの挿絵に描かれた女神である。

　大地の女神、ガイア。

　なるほど。完全に理解した。

「異世界転生してチートで無双できるやつですか？」

　私の問いに女神さまは首を縦に振った。

「呑み込みが早くて助かります。本来、死ぬべき運命の日よりも随分と早く不慮の致命的失敗（ファンブル）により死亡してしまいましたね。そんな貴方には、転生するにあたり特典（チート）がひとつ与えられます。その力を使って破壊神の復活を阻止するのです！」

　女神様がそういうと私の目の前に光る文字がいくつも浮かび上がる。

『【隕石招来（メテオ・ストライク）】の初期習得』

『SSSランクの魔剣を装備可能』

『最高位魔神将の召喚契約』

　どれも一見、強そうに見える。

　しかし一般人の精神力では習得した【隕石招来（メテオ・ストライク）】を使用するMPを確保できないため、実質的には死にスキル。

　SSSランク魔剣の装備可能要素も「装備可能」なだけで実際に魔剣が手に入るわけではないのが落とし穴だ。

　最高位魔神の召喚契約なんて罠も罠。呼び出したところで魔神を従わせるための魔神使い（デーモンサモナー）技能のレベルが足りずに、魔界から来たボスクラスの怪物が暴れ回る大惨事が容易に予想できる。

　この女神、パッと見で強そうなスキルをもらって冒険が上手くいかない冒険者を笑う趣味でもあるのか？

「さあ、新たなる迷える魂よ。早く選択するのです」

　そう急かすな。私はキャラ作には時間をかけるタイプなんだ。

　地雷を避け、できるだけ良いチートで第二の人生を始めるべく私は目を走らせる。……見つけた！

「これにします」

　そう言って私が指さしたのは『初期レベル＋１』という些細なチートだった。

「本当にそれでよいのですね」

　私が頷くと女神は私の額に指を突き付けて言った。

「この世界の成人年齢である15歳まで、あなたの記憶を封印します。転生者であること、前世の記憶、破壊神の復活を阻止するという使命。それらは15歳の誕生日を迎えたときに思い出せます」

　記憶。そう記憶だ。

　データマニアの私には前世の記憶という最高のチートがあるのだ。

　私は来世を『初期レベル＋１』とTRPG知識で無双する！！！