第3話

「…彼女は、リュウの特別になりそうか?おまえなら、その顔だけでおとせそうだけど。どうする。いくか、いかないか」



いやなやつだ。彼女を見つめる視線に、こいつは気づいていたようだった。おれはアキトを睨むとすこし笑っていった。




「いく。あの子のこと、知りたい」



その言葉に、すこし目を見開いたアキトがおもしろそうにいった。



「ほかの女が聞いたら嫉妬しそうな言葉だなぁ。まぁ、いいか。それならはやくいこう。彼女は多分、つぎの駅でおりる」



十メートルもない距離を、時間をかけて歩く。おれが彼女のところについたのは、ちょうどアキトが話しかけるときだった。おれへのやさしさからか、ねえねえ、おれたちと遊ばない?なんていうナンパ口調で話しかけることはしなかった。




「二組の櫻井さんだよね。おれ、一組の黒崎っていうんだけど、こいつと…すこし話してやってくれないかな」



隣にきたおれを指差し彼女にわらいかけるアキト。なんてことをいってくれるのかと、アキトに睨みを効かせると、彼女は指をたどってこちらに視線をむけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る