プロローグ

第1話

彼女は、風音とかいて、カザネとよんだ。



小顔で美人な黒髪。



すらっとのびる手足は棒のように細く、初めて触ったとき、思わず手を離す程おどろいた。




薄化粧の彼女に清潔さを感じた。キスをすればくちびるにひっつくグロスも、抱きしめると匂うファンデも好きじゃない。



最初、おれが惹かれた魅力はそこだった。




彼女をみつけたのは、夕方の電車にゆられながらふと、視線を向けた先。



おれと同じ学校の制服をほんのすこしだけ着くずした姿は、なぜか色っぽく映ったのをおぼえている。



髪を耳にかけた姿に、自然と目が釘付けになっていた。耳にはイヤフォンがかかっている。あの子は、どんなジャンルを聴くだろうか。




何故か無性に気になって仕方がなかったが、声をかけることはできなかった。肩をとん…っと叩いて名前を聞けばいいのだ。なんども頭でつぶやくのだが、やめておこうと、なにかがとめるのだった。

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