第7話 エルフSugee!!

エルフという名前をつけた後、俺とエルフたちは邸から少し離れたところに来た。

伯爵家の本邸というのもあり場所自体は本当にでかい。

江戸城とその周辺よりちょっと小さいくらいだろうか?

そんなに広いとなにもない場所というのも存在するので、父上に怒られなさそうな場所を選んでそこを森とする。


「アルバルト様の本邸近くに我々の拠点を立てていいのですか?」


「あぁ、これからはお前たちに守ってもらうのだ。これくらい当たり前だ」


「おぉ」


「なんと寛大な」


寛大とか言っているが、いくら好きでも一生戦えって言われてるんだぞ、エルフたちよ。


「ーーと言っても木が生えるなんて何十年もかかるぞ?」


エルフはほぼ不老だから何十年くらい一瞬だろうが、俺からしたら長い。

さらに言うと殺される。システィアに。


「ご安心ください。我々の魔法により木々は一瞬で成長できます――リーシア」


「はい‥アルバルト様、今から我々の魔法をお見せしますのでご覧ください」


リーシアと呼ばれた女性のエルフはどこからか小さめの杖を取り出した。

この世界は基本的に杖によって魔法を発動する。

大きめの杖を使う魔法師もいるが、基本小型の小さいやつだ。


「ーー同胞よ目覚めよーー{構築}」


ちょっと地面が光ったと思ったら、再生するかのように木々が生えてきた。


「これは――凄いですね」


シウスも想像を超えたのか感嘆とした声を上げる。


「‥‥治癒魔法の派生、再生魔法か」


ちょっとそれっぽいことを言ってみる。


「我々は自然創造魔法と呼んでいますがその認識であっています」


自然創造魔法。

類を見ない魔法だが、あまり戦闘向きじゃないな‥‥主人公の攻撃魔法で燃やされそうだ。


「これは確かに凄いな」


「ですが、100人で暮らすのにこの広さでは足りないと思われます」


「それを解決するのが自然創造魔法です。この森は小さいですが中に入ればエルフ以外は迷い、エルフはここから遠く離れた我々の村に出れます」


「まさか、転移ができるのか?!」


エルフSugeee!!


「はい‥行き先は決めれないですが、アルバルト様や騎士団の皆様は我々と共に入れば我々の村へ、転移することができます。どうぞついて来てください」


サキたちが森へ進み始めたので俺もついていく。

シウスたちはまだエルフを信用できないのか、警戒しているが時間が解決してくれるだろう。

ん?エルフって100人いると聞いたが、シウスたち十数人で大丈夫なのか?



少し森を進み続けると、空気が変わった気がした。


「―――アルバルト様、もうすでに先ほど見えた森の大きさ以上に進んでおります。どうやら本当のようですね」


「しかし、エルフ族?がこのような魔法を使えるとは驚きました‥これほどの魔法があってなぜ数千年前に奴隷商に捕まってしまったのでしょうか?」


「お、おい」


騎士の1人が疑問に思ったのか聞くと、他の騎士たちが止めた。


「構いませんよ、過ぎた話ですし―――それは奴隷商人たちが我々の弱点を知っていたからです」


「弱点‥‥まさか鉄器か?」


「近いですが、鉄器程度で弱点になると我々はすでに滅んでいたでしょうね」


前世で読んだラノベの知識を言ってみるとどうやら違ったらしい。


「まぁ、私なら滅ぶ前に道連れにしたでしょう」


リーシアがそんなことを言うと、他のエルフたちも少し笑った――――え、笑う要素あった?怖いんだけど。


「鉄器ではなく、銀ですね」


「銀?あの銀か?」


中世らしく、金よりも高価である銀。

それがエルフ弱点?


「どうやら我々エルフは銀をみると、とてつもなく強い忌避感を感じるのです」


「そうですね、私も一度見たことがありますが呪われたように動けませんでした。あの時は気合いでなんとかしましたが、今でも銀は無理ですね」


リーシアがサラッと脳筋発言をした。


「そんな弱点‥俺たちに教えてよかったのか?」


「アルバルト様は我々の主ですからね、アルバルト様としても安心するでしょう」


「そうだな‥‥助かる」


完全に主と従者の関係だが、それでいい。

ただシスティアには知られないようにしないとな。



「っと、到着しました。ようこそアルバルト様、我々の村へ」


急に開けた場所に出たと思ったら、村に出たらしい。

見上げると、大樹が何個もありそこにツリーハウスができていた。

ちょうどこちらを見ている女性のエルフと目が合った。


やっぱり美女しかいないな。


くっ、この男エルフたちはこんな楽園でいつも暮らしていたのかッ!


「!サキ様!よくぞご無事で戻られました――その人間たちは?」


「じいか、よく聞け‥今日から我々エルフ族の主となるアルバルト・エンペラー様だ」


「エルフ族?ま、まさか」


「あぁ、この方は我々を保護すると言うことだ」


「な、なんと‥‥!!」


感動したのか、驚いたのかじいと呼ばれたがあまり歳を取っているようには見えない、エルフが泣き出した。


もっとこれから一生俺の戦力となることとか伝えたほうがいいと思うのだが‥‥良い報告しかしない。まるで悪役だな!


「よかったです、もし今回もサキ様が会談に参加したのに種族名さえもらえなければ我々は―」


どうやら代表として来ただけあって、慕われているらしい。


「人間共に一族総出で、突撃するところでしたぞ!!」


ん?


「ん?」


「はは、相変わらずじいは戦いが好きだな」


「え、もし種族名さえ貰えなかったら戦いになってたの?」


「‥‥‥それよりもアルバルト様、これから村の皆を呼んできます。どうぞ私の家でおくつろぎください」


え、無視?もはや戦闘好きじゃなくて、過激派か?


「あ、あぁ」


そのままリーシアについていき大きめのツリーハウスの中にお邪魔した。

木の匂いがし、かなりリラックスできる空間だが。


「―――やばいの引き入れちゃったな」


「「私たちもそう思います」」


リーシアたちに聞かれないように呟くと、シウスたちが賛同して来たのだった。

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