第6話 エルフとの盟約
シウスが元公爵軍にいたエルフに連絡を取りに行ってから1週間。
ついにエルフと会えるらしい。
と言っても代表者の五人とだけどね。
ちなみに剣術についてもやってみたのだが、案の定というか全くできなかった。
リアンからは急に下手になりすぎじゃないか?と怪しまれたがなんとか真似をしてこの1週間耐え凌いだ。
前世から真似をすることだけは得意だったので、まさかここで役に立つとは。
それにしてもアルバルトってただ威張っていただけじゃないんだな‥‥ちょっと見習おう。
◇
しばらく面談室で待っていると、シウスが入ってきた。
「アルバルト様、お待たせしました」
そう言うシウスの後ろにはTheイケメンとThe美女が五人いた。
げ、男の方が多いな。
「よくきたな、此度君達の新領主になるエンペラー伯爵家の長男アルバルト・エンペラーだ」
「――これは新領主様のご子息でしたか、私はサキと言います。どうぞお見知りおきを」
身長はリアンと同じくらいか、それにしても結構筋肉がついていたりガタイがいい。
そしてイケメンである。ここにくるまで数十人の女性を落としていそうなほどのイケメンだ。ちくしょう。
対して美女の方は美しい金髪とグリーンアイ、それこそ女神のようである。
「早速本題に入ろう、エル――諸君らはマキシアム公爵家の軍勢にいたと聞いた」
美女と話したい気持ちもあるが、サキと名乗った男が代表者のようなので聞いてみる。
「マキシアム‥‥家名は覚えていないが、確かに貴族の軍勢に参加していたな。もっとも我々が戦う前に総大将が討ち取られたので、戦えていないが」
戦えていないって、まるで戦いたかったかのような言い方だ。
「まさか、敵軍勢に加わったことを処罰するために呼び出したのか?」
サキ、と名乗った男が警戒するようにいうと後ろにいるエルフたちが戦闘体制を取った。
それと同時にシウスたちが剣を抜いた。
「アルバルト様の御前で敵意を出すとは、死ぬ覚悟はできているのか?!」
「ちょっと待てシウス‥‥シウスたちもそうだがサキたちも好戦的すぎないか?」
「自然と戦いを好むのが我々部族ですからね、とはいえ今のはこちらに非がありました。謝ります」
え、なにその優しいバーサーカーみたいな発言。
エルフってそんな感じだっけ?
「自然ーーか‥‥失礼だが俺はつい最近になって君達のような部族がいることを知ったのだが、今まではどこに?」
本題とは関係ないが、気になったので聞いてみる。
ゲームでも全く登場しなかったエルフ族(?)。
登場していたら必ず主人公のハーレム軍団に加わってそうなのに、エルフという匂わせさえなかったのだ。
「それはそうでしょう。なにせ身を隠して暮らしていたんですから―――随分と前の話になりますが、我々が森で暮らしていた頃、当時は我々が人間から見て美しい容姿とほぼ不老なのもあり奴隷貿易の対象とされたりしていました。そのため今から数百年前には森で暮らすのをやめ、村を作りフードなので耳を隠して生活していたのです」
「なるほど」
「ですが、今回の貴族のトップが我々と盟約を交わしたため姿を表し、協力することになったのです」
「‥‥どのような盟約か聞いていいか?」
「一つのみですが我々に種族名を与えることです」
「ーー種族名を?」
「はい、我々は奴隷貿易の対象になったと言いましたが、それと同時に差別の対象にもなったのです。これは我々が使う魔法が特殊というのもありますが、他にも無名の種族だったりどの国からの保護を受けていないなどと様々が理由があるのです」
「ならば尚更、種族名だけで良かったのか?」
「交渉しても、我々はたった百人です。そもそも公爵家のトップは数字上の兵の数を大きくしたかっただけですからね」
「‥‥」
ここまで話を聞いてわかったことがある。
おそらくこのエルフ?たちを引き入れるには保護すればいいのだ。俺が。
強さはまだわからないが訓練させるなりすればいいし、何よりもほぼ不老というところにメリットがある。
途中で寿命で死なないし、年を取ることによる衰えもない。
つまり最後まで味方にすることができる可能性があり、衰えがないということは練度を無限に上げれるということである。
もちろん戦いで死ななければ、だが。
「――いくつか聞きたい、エンペラー家に恨みはあるか?」
「ないですね」
「ないのか?せっかく一つとはいえ自由に近づくかもしれなかったんだぞ?」
「元々、何千年と叶わなかった夢です。たった1つの戦争で叶えられるとは思っていませんでしたし」
‥‥嘘はついていないな。
「剣と弓で戦うと言っていたが、どのくらい強い?」
「えぇっと‥」
サキはしばらく悩んだのちに、シウスを見ていった。
「おそらくそこの騎士よりは」
「なっ?!」
馬鹿にされたと感じたのか、シウスは少し怒鳴った。
「しかし人数差があれば負けてしまいますね―――弓についても飛んでいる鳥に当てられる程度ですね、と言ってもたまに外れますが」
―――強いな。
程度、と言っているが平民から徴収される他貴族や正規軍もどきになら余裕で勝てそうだ。
人数を考慮しなければいけないという問題はあるが、俺が想定しているのは対システィア。
そして主人公たち。
「――決まった。先ほど何千年と叶わず、一つの戦争で叶うと思っていないと言ったな?」
「え?た、確かに言いましたが‥」
「今、ここで全て叶えてやる。何千年ではなく、一つの戦争でもなく一回の話し合いでな」
「えぇ‥‥え?」
「な、なんとおっしゃいましたか?!」
「それは本当でしょうか?!」
予想していなかったのか、今まで喋らなかった四人が驚いた声を上げた。
「俺が全て解決してやろう。種族名も保護も住む場所も、解放宣言も――なにもかもな」
「は、はぁ‥‥」
「しかし‥‥」
「なんだ、嫌なのか?」
「?!い、いえ!そういうわけでは‥‥ただそうなると我々はなにをすればいいのか」
「戦力だ」
「「?」」
「戦力だ、忠誠だ――サキの民族は戦いが好きだと言っていたな?それが欲しい、そして一生の忠誠が欲しい」
「そ、それだけで?」
それだけ、か‥このエルフたちからすれば自分たちが好きなことを求められているのだから、その程度に見えるのだろう。
「戦力と言ったが今のままでは満足しないぞ?剣についてだが人数差を無視できるようにしろ、弓については飛んでいる鳥に必ず当てられるようにしろ」
「!!は、はい!それなら少し訓練しなおせば達成できます」
「今すぐにでも皆に知らせます!」
「数年さえあれば期待以上に仕上げて見せましょう!!」
「1年だ、1年後にもっとも強い者たちを俺の護衛としてつける」
1年でどれだけこのエルフたちが強くなるかで、俺の寿命が伸びるか縮むか変わってくる。
「「「はっ!!」」」
いつのまにかエルフたちは俺に膝をついて見上げていた。
いいな。
聖人君主の主人公なら対等な関係を求めるだろうが、そんなの悪役っぽくない。
「エルフだ、今日からエルフと名乗れ」
「エルフ‥」
「なんという甘美な響きだ」
俺もそう思う。エルフにはみんなお世話になる。
「ありがとうございます――エルフ族族長サキはアルバルト様に永遠の忠誠を誓いましょう」
そういうサキは俺の手の甲に口付けをした。
意味は永遠の忠誠だが、男にやられると全然嬉しくない。
むしろ寒気がする。
――――――――まぁ、ちょっとチョロい気もするがこれでエルフたちが100人ちょっととはいえ味方になったのだ。
対システィア騎士団とでも名付けようかな?
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