第1話 最初から詰んでる
◇
ゲーム史上最悪のクズキャラと言われるアルバルト・エンペラー。
そんな悪役をーー正直言うと俺はかなり好きだった。
単純に悪役一筋だからというのもあるが、クズキャラのアルバルトでもとあるキャラには優しくしていた。
それはステラという名前の女の子。
名前と暗殺者という以外情報がなく、公式ガイドブックにも詳細に書かれていない彼女は、作中にて1シナリオだけアルバルトと恋仲になっていた。
1シナリオだけというのは他のシナリオだと普通に王国からの命令でアルバルトを殺害したりしている。
その1シナリオではアルバルトは恋愛感情はあったのかはわからないが、少なくともクズキャラではなかった。
ステラの生い立ちは主人公もしらない。
主人公以上にステラのことを知っているアルバルトはかなり信頼されていたのだろう。
最終的にステラはアルバルトと婚約したのだがその際に暗殺者としても引退した。
そのため、口封じのためにも何度も暗殺されかけるのだがアルバルトが
そんなアルバルトだが結局、王国から討伐軍を派遣されたり、アルバルトの奴隷である元令嬢の件で恨みがある聖教国からも侵攻され、殺されるのだがエンペラー家に残存している騎士団をステラの亡命のために使っていたりしている。
正直、ここだけだとかなりカッコいいキャラだが残りのシナリオでクズなのでまったく
それでもステラを守り通すために暗殺から守り、自分の護衛よりステラを逃すことを優先させたアルバルトは、俺が憧れる悪役だ。
1人の女性のために世界を国家を、正義を敵に回した悪役(1シナリオだけ)。
でも、好きだからと言って転生したいかと聞かれると明らかに違う。
◇
「――はぁ」
父親であるリアン・エンペラーは記憶によると数週間前から敵国の他貴族と戦争をしているらしい。
エンペラー家は伯爵家だ。皇帝ではない。
辺境伯なのだが、国防の要の一つということもあり王国から独立権を与えられている。
つまり自由に他国に殴り込みに行っていいという権利。バーサーカーになるアルバルトには渡しちゃいけない権利だな!
アルバルトの死因の一つに自身に強い
うーん、親子
「―――アルバルト様、御当主様が
アルバルトがやったクズ行為を
「?!わ、わかった」
え、そんな急に帰ってくるんだ。
記憶を探ってみても手紙とかはないし。
部屋から出ると居たのはアルバルトの護衛騎士であるシウスだった。
「ご当主様もアルバルト様が出迎えるとなると喜びましょう。なにせ一大決戦だったのですから」
「一大決戦?」
部屋から出て騎士にそのまま着いていく。
伯爵家本邸だからとてつもなく広い。記憶があるとはいえ1人だと迷子になりそうだ。
「はい、なにせ聖教国公爵家との決戦です。今までで最大規模の出兵でしたし最高の戦果を挙げられました」
「公爵家か‥‥それはすごいな」
ーーーーん?公爵家?
聖教国の公爵家?
とてつもなく嫌な予感がした。
「も、もしかしてもうすぐで10歳の誕生月だったか?」
震える声で聞いたのだが、嬉しがっているのかと思っているのか笑顔で言ってきた。
「はい、御当主様様もアルバルト様の誕生月までには終わらせると
おかしいな、ゲームで見たことある情報しか来ない。
まさに「あっ、ゲームでやったところだ!」だ。
ちょうど玄関の大広間に着くとシウスはすぐさま端で並んでいる列に加わった。
「ははは」
メイドたちが扉を開けて外ーー本邸の庭に出ると騎士団の中でも上位の部隊である親衛隊とリアンがいた。
「リアン様、若君が」
「ん?おぉ、アルバルト!出迎えに来てくれたのか!」
「は、はい」
ゲームでは登場しなかったリアン。
そんなアルバルトの父親は、最前線によく出ていると聞くのだが普通の人だった。
恋愛ゲームらしいイケメン男だけどね。
アルバルトの容姿はやっぱり両親から引き継いでいるのだろう。
「アルバルトやっぱりお前はいい息子だな!邸の者から聞いていると思うが今回の戦争は隣国の聖教国にいる公爵家との戦いでな、勅命でもあるのだが公爵領にいくまでにも3つの辺境伯と戦いーー」
「リアン様、若君はまだ9歳です。しち難しい話は」
「あ、あぁ‥そうだったな」
親衛隊からそう言われると元気をなくすアルバルトの父親。
こいつ、本当にあのクズキャラの父親か?
「そ、そうだ!アルバルト、お前に土産がある」
「土産ですか?」
あ、もうこれ確定だな。
「そうだ、本当は王族に献上しなければならないのだが‥特別でな」
「それって勅命に背いているんじゃ‥‥」
「おい、連れて来い」
「はっ!」
リアンがそういうと親衛隊が馬車から降ろしたのは手枷をつけられている同い年くらいの桃色の髪女の子だった。
ははは、やっぱりそうだよな。
アルバルトのクズ行為の最初であり、100通りの死に方のうち20回アルバルトを殺したヒロインキャラのーー
「此度倒した、聖教国公爵家の令嬢のーー」
ーーシスティア・マキシアム
「システィア・マキシアムだ」
というか子どもに奴隷を送るって本当だったのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます