第4話 わらわは小坂部姫
わらわはいったい何をしているのか、ここはいったい何処であろうか。
わらわは美しかった。
わらわを取りおうて、
わらわを一目観ようと遠き国より
それも一人ではない、片手では足りないほどの人数じゃ。
わらわの行く所にはいつも人が
その頃のわらわは
世の中はわらわの為にあるのだと思うておった。
わらわは幸せであったのじゃ。
遠い昔に大きな
何が原因で何が目的なのかはわらわにはよく解らぬ。
外で慌ただしく音がして、城が燃え始めてから戦じゃと気が付いたのじゃ。
いや、戦じゃ、戦じゃ、と誰かが叫ぶ声を聴いて、これが戦なのじゃと初めて気付いたのじゃ。
わらわは腕を引かれ右へ左へと駆けずり回った、その時お気に入りの美しい
気が付いたらわらわは
遠くから今まで暮らして居た城が焼け落ちるのが観えた。
それよりもわらわは足が傷だらけで所々皮が
その時わらわを喜ばす出来事がおこった。
姫、姫とわらわの
しかしその者達は嬉しくて抱きすがるわらわの
わらわは一瞬何が起ったのか解らなかったのだが、その者達がわらわの
しとねのことは
わらわの
わらわは谷から落ちる途中にある木々に引っ掛かっていたことを、
始めはあれこれと
弥平の
わらわは逃げ出さないように、日中は縄で柱に縛り付けられていた。
たまに弥平は、連れを連れて帰って来ることがあり、その時は
どうやら弥平はその連れ達から銭を取って居たようだ。
一度わらわは
当然弥平は
それでも毎日しとねは続いた。
いつしか弥平が
わらわは、しとねをするだけの人形となった。
弥平はわらわにもう
三日程小屋を空けることも珍しくなく、そんな時も縄は掛けない。
弥平が小屋を空けるのを
普通であれば
谷に到着したわらわはそのまま谷へと身を投げた、今度は木々に引っ掛からなかった。
わらわは長い
気の遠くなるほど長い間だったが、怨みだけは忘れなかった。
怨みはドス黒いのじゃ。
怨みだけを思い続けていると、他の事を考えなくて済む。
そうして怨みだけを
わらわは夜叉になったのじゃ。
夜叉になったわらわは、まず弥平の所に行った、勿論食い殺すためじゃ。
しかし弥平は居なかった、
どうやらわらわは暗闇の中を、数百年以上も彷徨って居た様じゃ。
復習出来ぬ、ああ恨めしい。
弥平の墓を探し出して骨を食ろうたが、それでは気が済まぬ。
わらわをこの様なもののけに姿を変えてしもうた。
弥平はもう居らぬのじゃ。
ああぁ、弥平が憎い、男が憎い。
ああぁ、生きたままの男を食らいたい。
わらわは夜叉になったが、人であった頃の記憶を覚えていた。
それは
わらわは夜を彷徨うた、昼は嫌いじゃ。
美しい姫じゃった頃の自分に化けて男を
誘うて
姫であった頃の自分はなんとも非力じゃったが、今のわらわは男なんかよりも力ははるかに上じゃ、まるで小動物を
彷徨うて居る内に、数匹の夜叉にも出逢うたがわらわの方が強いのが解った。
睨み合うた瞬間にそれは解るのじゃ。
ある夜叉が、
男は若ければ若い程旨いのじゃ、年寄りは肉も堅いし血も苦い。
若い男の血は甘く肉はとろけそうじゃ。
しかし一番旨いのは子供じゃ、子供なら女でも食える、
わらわが得意とするもは盛りの付いた男じゃ、姫の自分に化けて笑いながら暗闇に歩いて行けば、間違いなく付いて来る。
今までに数千は喰ろうたかの、食えば食う程にわらわの力は強くなって行く様な気がするのじゃ。
あまり狩場を荒らし過ぎると、
一度坊主を喰ろうてみた事があるのじゃが、
あ奴らの
坊主は喰わぬ様にした、殺すだけじゃ。
今まで出遭うたどのもののけよりも、わらわの方が強かった。
わらわを
わらわはもののけに生まれ変わっても姫なのじゃ。
わらわは皆にちやほやされるのが好きだから、それは夜叉になっても同じじゃ。
力は必要じゃ、力が弱いと思うようにされてしまうからの。
今のわらわは思うようにする側じゃ。
ホホホホホ。
憎しみと怨みがわらわに力を与えてくれたのじゃ、人であった頃のわらわを
人も、もののけもこの世に
暗闇から今夜の
わらわは姫なので綺麗な城が必要じゃ。
そう思って遠い昔の記憶を頼って
何処かに城は無いものか。
美しい姫が住むのに
もののけの一匹が
姫路ならここからそう遠くは無い、早速わらわは姫路に行った。
それを観た瞬間わらわは心を
なんと美しい城か……わらわが住まうに相応しい。
わらわはこの城に巣くうのじゃ。
それはきっと昔から決まって居ったに違いない、これはわらわの城じゃ。
わらわの名は
人はわらわのことを
姫路城に
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